2014年08月01日

第9回 古志野純子さん(長岡塗装店 常務取締役)

イクボス・ロールモデルインタビュー第9回は、株式会社長岡塗装店 常務取締役の古志野純子さんが登場。長岡塗装店は、従業員数28名の島根県松江市の塗装店。家・住宅・建物の外壁塗装・塗り替え・リフォーム・改修・補修などを行う会社です。
2008年の第2回「ワーク・ライフ・バランス大賞」をはじめ、数々の賞を受賞。女性のイクボスとして、働きやすい環境づくりをしたり、若手社員の定着と技能伝承を推進する理由を伺った。(FJイクボスプロジェクト

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<古志野純子さんプロフィール>
1983年入社、1997年常務取締役任。優秀な社員が定着し能力を発揮することが、顧客の信頼を得ることにつながっていくという経営方針のもと、「技能伝承の鍵は”若者の定着”」をモットーに社員全員がいきいき働くことのできる職場環境づくりを進めた。その結果、2006年ファミリー・フレンドリー企業島根労働局長賞、2008年「子どもと家族を応援する日本」内閣総理大臣表彰、2008年 第2回「ワーク・ライフ・バランス大賞」優秀賞受賞(社会経済生産性本部)。8年間退職者ゼロ。同級生の夫と二人家族。子供はいない。

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【入っては辞めるのが、当たり前の会社だった】
安藤:長岡塗装店さんの歴史は長いんですか?

古志野:創業75年です。塗装業のみでスタートし、今ではリフォームなども行っていますが、建設業ですからいわゆる3K、「きつい」「汚い」「危険」な仕事です。以前は会社に入っても、「こんな仕事だったのか」と、辞めていく人がいるのは当たり前な感じでした。夫も同じ会社で働いていましたが、18年前に「このままじゃ会社がダメになる」「若い人が辞めないように、何とかしないと」と思ったんです。

地域的に求人が多いわけではないので、人材募集を出せばすぐに人は集まります。でも、働きながら、自分の一生を楽しんで続けていってもらうにはどうしたらいいのかと、考えました。私自身の一生も含めてです。それで思い当たったのが、「会社に発生するモデルケースに対して、その人のやり方に合わせられるように変えていけばいいじゃないか」と思ったんです。

そんな流れの中で2002年「子の看護休暇」を取り入れました。子ども1人に年間5日間の特別休暇が付与されます。子どもが4人いれば20日間の休暇が付与されることになります。

安藤:それは国の制度とは別に作った会社独自のものですか?

古志野:基本は国の「子の看護休暇」と同じです。が、国の場合は、子が1人の場合は1年に5日、2人以上の場合は1年に10日と定められているので、子どもが3人以上と人数が多くても、その人数に掛け算した日数を休めるのは、会社独自だと思います。

あとは、2002年当初から申請書類を簡単に記入しやすいものにしたり、30分単位で取れるようにしたことですね。

安藤:オリジナルの書式を作ったり、30分単位で看護休暇を取れるというのは、会社側の手間がかかりませんか?

【制度を使いやすくするために、独自の視点を取り入れる】
古志野:制度を使ってもらうためには、面倒な手続きが少ない方がいいですから。30分単位でも、エクセルなどで管理すれば全く問題ありません。

子どもは急に病気になりますから、前もって書くことは基本的に難しい。だから、書類も、後から出せばOKです。子どもを朝病院に連れて行って30分だけ遅れるということもありますよね。1日分の子の看護休暇を30分に分割して複数日に分けて使えるということです。子どもを病児保育に連れて行くために、朝30分、夕方30分を分けて使うこともできます。その場合は合計で1日1時間分の「子の看護休暇」を使ったことになります。

保育園や病児保育も、保育料の1/3を補助しています。半年に1度計算して、振り込んでいます。子育て中の従業員は、ちょっとした臨時収入でうれしいと思いますよ。育児中の従業員は、ここ10年以上退職者がいません。

安藤:それはいいですね。よく講演などで「大企業だからできるんでしょ」なんて話も出ますが、中小企業だからできることもありますね。

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古志野:働きっぷりのいい、かっこいい社員になって欲しいんですよ。お話ししたような制度は、会社の利益を出すための投資だと思っています。小さい会社だからこそ、効果も見えやすいですね。

働きやすさの噂も広まっているのか、従業員募集を出すと多くの応募がありますし、工業高専や大学にも求人を出せるようになりました。女性でも現場監督の仕事をできるような人が入社してくれます。

安藤:帰宅時間はいかがですか?

古志野:現場の仕事は朝早いので、夜はあまり飲みにもいかないで、みんな家に早く帰るのが当たり前ですね。もちろん必要なら残業するのもいいんですが。残業しがちな社員には、声をかけたり、残業時間や休日出勤の日数、顔色なども注意してみるようにしています。

父が社長の時には、仕事があれば長時間働くのが当たり前という感じでしたが、若い人にその感覚は通用しませんから。

【育児中の人だけではなく、高齢従業員への働き方の配慮も】
安藤:そのあたりは、女性ならではの共感脳を活かしている感じですね。
ところで、若い人は働きやすそうですが、そうすると年輩の従業員の風当たりが強くなったりしないですか?

古志野:確かにありましたね。若い人には休み取らせたり、早く帰らせたり。でも自分たちは働きづめって。1998年に再雇用制度を導入し65歳まで働けることにしたんですよ。これは、熟年の職人さんたちに、若い人への技術の伝承と教育、そして応援をして欲しいという気持ちからです。

あと、社会保険労務士の方と相談し、社員が58歳になると、年金支給額に影響する59歳の給料の仕組みについて三社面談を重ね、本人に納得がいくまで話し合います。68歳になった男性や60歳になった女性は労働日数を月15日にするという仕組みも個々の希望に対応し作りました。元気な若者は土日、ちゃんと休みたいんですよ。でも高齢の職人さんは土日祝日関係なく「出てもいいよ」という人もいますから。現場の采配をしている担当者と、人員配置を調整します。

ほかにも、2002年から本人が払う家族の介護費用も証明書を提出してもらって、1/3を会社で負担することにしています。島根県は日本一の高齢県なので、介護問題はこれからたくさん出てくると思います。

安藤:年輩の方々は変わりましたか?

古志野:最初は強面でしたけど(笑)、最近はみんなニコニコしてやさしくなっちゃって。58歳から安心して柔軟な働き方ができるのはいいねって、年輩の方々にも好評です。

安藤:女性従業員と古志野さんの関係はどうですか? 企業によっては、女性の敵は女性なんていうところもあるみたいだけど。

古志野:今はすごく、信頼してくれていますね。「女性社員のしゃべり方とか雰囲気が、私と似てる」ってよく言われます(笑)。今働いている女性社員が入ったときには、すでにいろいろな制度がありましたから。基本の就業時刻は8時から17時30分なんですが、時短を使ったり、必要なら時間をずらしたりして働いてもらっています。

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安藤:「お局さん」と呼ばれるような女性の方と、若い人との確執はないですか?

古志野:過去に全くなかったということはありませんが。でも、若いママたちを自分が支えていると思っても、本人の体調が悪くなって休んだときに、若いママたちが支えてくれたりして、それで気づいていくというか。そんな関係を重ねながら、コミュニケーションを取って、心を開いていく方が働きやすいですからね。

【従業員とのコミュニケーションから、情報が集まる】
安藤:ボトムアップと、トップダウンの両方がうまく働いている感じがしますね。声を拾って上に上げる、トップも理解して制度や社風を改善する。この間の部分を古志野さんが担っているんですね。

古志野:普段から、従業員のみなさんの声を聞くようにしています。本当に何か変える必要があると思えば、社長に掛け合います。社内をウロウロして必要以上に声をかけているかもしれませんね(笑)。普段のやりとりから、いろいろな情報が入ってきますから、それが私自身の経験値にもなっています。

安藤:社内の母性と父性のバランスがいいんでしょうね。根性論や精神論主義とかじゃなく、ヒューマニティがチームワークを良くして、それが会社にも良い方向に働いているんでしょうね。イクボス10カ条は、いかがですか?

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古志野:ほぼできていると思います。先日、会議は立ってやろうと提案したんですが、それは却下になりましたけれど。でも、会議では必ず、結論を出すようにしています。

安藤:今まで会社は不況だから、ワーク・ライフ・バランスどころじゃないと言ってきた。でも過去最高益を出した今こそ、改革できるチャンスですよね。いろいろなことを背負って生きている人のほうが気づきがあるし、同僚に優しくなれるし、会社にとってもプラスになるんじゃないかな。長岡塗装店さんのように多様な働き方を認め、従業員を大事にできる会社が今後伸びていくと思います。ありがとうございました!

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聞き手:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
筆:高祖常子
ラベル:イクボス
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2014年07月15日

第8回 佐藤善和さん(日立ソリューションズ 金融システム事業部第一本部本部長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第6回は株式会社日立ソリューションズ 金融システム事業部第一本部本部長、佐藤善和さんが登場。現在は約360名の部下(女性が1割)を管掌。今年度より、本部長特命事項としてダイバーシティ推進組織を本部で組成して、具体的な本部活動に着手しはじめたとのこと。従業員との関係などについて、部下であるご夫婦、浅野さん、大村さんにも同席いただき、お話を伺った。(FJイクボスプロジェクト

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<佐藤善和さんプロフィール>
54歳。1978年に入社。2005年主任技師(課長職)、2008年担当部長(部長職)、2011年本部長職となる。奥様と長男(高1)、長女(中2)の4人家族。ご自身は、会社制度の育休・褒章休暇はこれまで取得経験なしとのことですが、お子さんの学校行事などへは、仕事より優先で出席していたとのこと。


【自分自身は、家庭を顧みない働き方だった】
佐藤:最初は銀行のシステム構築を担当していました。ITシステムへの投資が活発な時代で、システムを作っても、作っても追いつかない状況。20~30代のときの働き方は、本当にハードでしたね。朝8時半頃に出社して、夜中の12時をまわって帰ることも珍しくありませんでした。出会いもなかなかありませんでしたから(笑)、社内結婚して、妻は仕事を辞めて専業主婦になりました。妻が専業主婦になったから、なおさら「子育てはよろしく」っていう意識の中で、生きてきてしまいました。
子どもの学校行事には行きましたが、日々の子どもへの対応はできませんでした。それに、自分だけ早く帰るのは、メンバーに迷惑をかけてしまうと思っていました。

安藤:お子さんが生まれたときはどうでしたか? 立ち会い出産はされましたか?

佐藤:立ち会い出産は希望していました。ちゃんと休みも取らせてもらいましたよ。でも結局帝王切開になったので、出産のときには立ち会えませんでしたが。

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安藤:金融ソリューション本部の大村さんは1歳のお子さんがいるんですよね。どうですか?

大村:里帰り出産ということもあり、予定日前後で夫は1週間の休みを取り、病院には2泊してくれました。しばらく実家で過ごしてから、こちらに戻りました。

安藤:夫の浅野さんも、金融ソリューション本部なのですね。お休みを取りたいと会社に言うのは大変じゃなかったですか?

浅野:「妻が出産の時に1週間休みたい」と上司に伝えたら、妻のことを知っていることもあって、躊躇なく「どうぞ!」って感じでしたね。

大村:妊娠4カ月のころに会社で飲み会があったので、そのときにみんなに報告しました。早い時期に伝えておいたのがよかったかもしれません。みんなびっくりしながらも、「おめでとう!」って言ってくれてうれしかった。「ぜひ、出産後は復帰して欲しい」と言ってくれました。そんな感じで、言い出しにくいというようなことは、全くありませんでした。一緒に働く先輩にも2人お子さんがいて、子どものことも話しやすい雰囲気なんです。

浅野:2人は部は同じですが所属が違うので、いつみんなに妊娠のことを伝えようかって相談していました。飲み会に結婚式にも来てくれたメンバーが集まることになり、そこで発表しました。みんな「おめでとう!」って、言ってくれました。育休は1週間取りましたが、もともと長期に取るという意識はなかったですね。でも、2人目の子どもができたら、もっと長期間の育休を取りたいと思っています。

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【制度よりも、取りやすい雰囲気やコミュニケーションが大事】
安藤:御社は独自の育児支援制度などがあるんですか?

佐藤:とりたてて独自の制度があるわけではありません。それよりも、「育休をちゃんと取れるか」というのは、取る方の気持ちに抵抗感があるかもしれませんね。結婚して退社してしまう人も、少なくはありません。会社組織として、育休をちゃんと取って、復職してもらうということを進めていく必要があると思います。

安藤:大村さんは、育休をどのくらい取りましたか?

大村:育休は1年間取りました。復帰の3カ月前に育休取得中の人たちの懇談会がありました。年に2回実施されていて、いろんな部署の人が30人くらい集まります。育休から復帰した先輩方のパネルディスカッションがあったり、「職場復帰前には上司と面談するといいですよ」などのアドバイスをいただいたりしました。

今は時短勤務をしています。打ち合わせも日中早い時間に行ってくださるなど、配慮いただいています。プロジェクトにも入っていますが、夜遅くまで働かなくてはならない仕事ではないので助かります。職場復帰歓迎会も、子連れで行ける店で平日の業務終了後に開いてくださいました。

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安藤:佐藤さんは、上司として心がけていることなどありますか?

佐藤:「困ったことがあったら、言ってね」と伝えています。会社としては、育休などの制度を持っているけれど、現場の管理は上司の仕事ですから、そこは上司が仕事の調整をして、部下が育休を取りやすくすればいいわけです。

奥さんの体調が悪いとか、子どもがけがをしたとか、急に休まなくてはならないこともありますが、すべてスケジューラーに書いてメンバーと共有する、わかっている予定は早く宣言しておくことが大切だと思います。たとえば、休むことが決まってなくても「妻の体調が悪いので、休むことがあるかも」っていうことでもいいわけです。共有しておくことで、ほかのメンバーがその人が休むことになったときのフォローや体制をつくる準備ができます。

【部下にも家庭を大事にして欲しい。自分自身も家族の時間を取り戻し中】

安藤:佐藤さんが、そのように考えるようになったきっかけは何ですか?

佐藤:かつての自分が仕事優先で、家庭を顧みていなかったという罪悪感もありますね(笑)。だから部下には、家庭も大事にしてもらっています。家庭も顧みず長時間労働になって、体をこわして辞めることになるのは、会社にとっても本意ではありません。

「年休を取れ」と人に言うだけじゃ、部下が取りにくかったりしますから、まずは自分からやっています。夕方もほぼ定時退社しています。私の子どもは高校1年生と中学2年生ですが、今まで関わってなかった分を取り戻している感じでしょうか。現在では、残業をすればいいと言う考えは変わってきていると思います。プロジェクトにもよりますが、早めに帰る人も増えてきていますね。

安藤:飲み会とかはどうですか?

佐藤:部下の顔を見て、飲みに行きたい、話したいような人がいれば、金曜日とかに声を掛けています(笑)。平日はもちろん、「どうしても仕事をここまで片づけて」っていうことはあると思いますが、帰りが遅くなりがちの人には、「もう帰った方がいいんじゃない」とか「お休み取ったら」とか、声をかけるようにしています。早く帰ったり、休みにくい人には、周りからの後押しも大切ですね。

浅野:新人で入社したときに、佐藤さんが上司でした。結婚式に来てもらったり、育休取得の相談もさせてもらいました。

大村:ママ友だちが勤務地が変わって家から遠くなったときに、「早く帰った方が良いよ」って声をかけてくださったり。上司がそのような対応をしてくれると、本当に働きやすいです。

浅野:家に帰って、子どもが眠った夜に、夫婦で仕事の話をすることもありますね。

安藤:ワークライフバランスを実践して、朝4時とか5時から早起きして、ひと仕事しているパパも多くいますよ。

浅野:子育てしていると時間的な制約が増えていくけれど、その中でいかに数字を出すかっていうのが課題ですね。

佐藤:上司としても、自分の右腕左腕をつくるのが大事と言っています。「自分しかできない」ではなく、いざとなったら「頼む」と言えること。それができることが、結果、組織として強くなっていくのだと思います。大きな会社ですから、まだまだ部署によっては、「他の人に頼むなんて、甘えたこと言っているんじゃない」という考え方のところもあると思いますが。でも、「ダイバーシティ推進本部長として、引っ張っていって欲しい」と言われていると思っていますので、わからない部分もありますがどんどん発信していきたいと思っています。

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【メンバーの状況を把握することで、働きやすい環境を作れる】
安藤:イクボスとして、どんなことに力を入れていますか?

佐藤:メンバーとのコミュニケーションから始めています。たとえばいつも始業に遅れてくる男性がいて、話を聞いてみたら「共働きで自分が子どもを保育園に送っていて、始業ぎりぎりか遅れてしまうことがある」と言うことがわかったり。それぞれの事情を知れば、配慮したり、メンバー間で調整することができます。部下に働きやすい環境を提供するのも本部長(上司)の仕事だと思っています。

安藤:育児中もそうですが、家族の介護をしなくてはならない人が、今後増えてきますからね。育児よりも、介護の方が大変です。上司がちゃんと状況を把握して理解していることはとても大事だと思います。

佐藤:「環境がいいから働き続けられる」ではなく、それが「当たり前になる」ことが大切だと思います。

大村:実は4年前くらいに仕事を辞めて、実家の福岡に帰ろうと思った時期があったんですよ。でも、そのときに「このプロジェクトだけ、頑張ってみろ」って、上司に言われて。そのプロジェクトで、夫と出会いました(笑)。

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<イラスト/東京新聞>

安藤:佐藤さん、「イクボス10カ条」に当てはめると、いかがですか?

佐藤:制度を変えたりしているわけではありませんが、6割くらいできていると思います。

安藤:浅野さん、佐藤ボスの印象はどうですか?

浅野:新人の時から見守ってもらってるので、頼りになるボスです。無理矢理ではなく、コミュニケーションを取りたそうな人を見つけて、声をかけてくれたり、話を聞いてくれる。それが自然体でできる方です。見習うところがたくさんあります。

佐藤:最近は、ちょっとうざいって言われることもありますけどね(笑)。

安藤:それだけ、メンバーのことを見ているってことですね。ありがとうございました!

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聞き手:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
筆:高祖常子

ラベル:イクボス
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2014年07月08日

第7回 荒牧 秀知さん(ANA 業務プロセス改革室 イノベーション推進部部長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第7回は、ANA業務プロセス改革室 イノベーション推進部部長の荒牧秀知さんが登場。激務だった営業部門時代、価値観が変わった海外勤務。その後帰国して管理職に。システム開発部署へ異動し男性中心のチームから一転、女性の多いチームのボスになり育休取得する部下のマネジメントを経験しイクボスの道を行く。家庭では3児の父親として地域活動も満喫する荒牧さん。部下である吉元恭香さん(1児のママ)にも同席いただき、東京・汐留の本社でお話を伺った。(FJイクボスプロジェクト

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<荒牧秀知さんプロフィール>
50歳。大阪出身。1988年ANA入社。羽田空港、東京支店、営業本部、ロサンゼルス支店、営業システム部、グローバルレベニューマネジメント部など歴任し、現職。これまで10人の部下が育児休業取得後、職場復帰している。家族は妻と3人の子供の5人家族 (高3長女、高1長男、小5次女)週末は地域のサッカーチームのコーチとして次女とサッカー三昧 & 妻とともに市民農園での野菜作りを楽しむ。

<吉元恭香さんプロフィール>
1997年ANA入社(客室乗務員)。2008年4月1日付で総合職掌へ転換 。同年11月に客室本部付育児休職。2010年3月1日、復職しIT推進室(現業務プロセス改革室)へ配属。

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【仕事漬けの激務の日々】

安藤:最初はどんなお仕事でしたか?

荒牧:客室乗務員のスケジュールを作成・管理する部署でした。当時、女性が1,300人ほどいまして、その後も女性の多い職場を多く経験しました。また、男女雇用機会均等法施行の直後でしたので、女性総合職も入社してきた頃でした。

安藤:ご結婚はいつ頃ですか?

荒牧:1995年、31歳の頃です。当時は営業部門で国内線の座席管理の仕事をしていました。航空機の座席を売り分ける担当です。一年を通して忙しくしていました。

安藤:よく出会いがありましたね(笑)

荒牧:職場結婚でしたので(笑)

安藤:日本に職場結婚が多いのは長時間労働のためだという説もありますよね(笑)長く一緒にいることで情が移ると。

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荒牧:同じチームのメンバーでした(笑)。 結婚の翌年に長女が産まれました。結婚した頃は営業本部に異動していましたが、そこもまた激務の部署でした。ちょうどあるプロジェクトメンバーになり、残業も多い忙しい時期でした。当時は家内をほったらかしで、私は仕事漬けでした。

安藤:奥様からはクレームはありましたか?

荒牧:「今日誰とどういう仕事をしていた」という話をすると大体職場の様子が分かるという状態でしたので、とても理解してくれていました。

【ロサンゼルスで大きく変わった人生観】

荒牧:1998年にロサンゼルスに転勤になったのですが、それが私にとってのターニングポイントでした。配属先は北米全体のお客様のご予約や発券のサポートをする予約案内センターで、50人くらいの組織でした。そのうちの6割くらいが日本人、日系人。残り4割が日本人以外というメンバー編成でした。アメリカ人、フランス系、イタリア系、フィリピン系、韓国系、インド系など、様々なバックグラウンドを持つ社員がいました。また残業するという文化が現地にはありませんでした。

カリフォルニア州というのは全米の中でも労働法などで最先端を行く場所でした。カリフォルニア州で始まった事が全米に広がって行く傾向がありました。当時、組織管理や業績評価、コーチングといったものを実地で学ぶ機会があったことはとても良かったと思います。日本にいた時には全く知らない世界でした。

18時が終業時間でしたが、私自身20時まで残るのが年に何回かという感じで、みんなが帰った後に後片付けをして、19時には家に着いている状態でした。通勤も車で10分だったんです。

私の渡米は2年間のプログラムで家族も帯同しました。家内と2歳になる娘と一緒に行きましたが、私にとっては娘と過ごせる貴重な機会でした。近くにビーチや公園のある治安のいい場所に住んでいたこともあり、貴重な時間を持つことができました。

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安藤:娘さんはその時のことを覚えていますか?

荒牧:4歳で帰国しましたので覚えてはいないようですね、写真やビデオで残っているだけで。1年後に長男が産まれました。現地で出産に立ち会え、とても得難い体験をすることができました。

2年で帰国し、システム系の職場に配属になりました。運賃レベルに基づいて座席販売の配分を最適化するためのシステムを導入するプロジェクトのメンバーになりました。男性中心の小さなチームで、どんな業務プロセスにし、どのシステムを採用するかを検討するために、世界各地のパートナー航空会社をまわったり、またベンダーと調整・交渉したりしていました。仕事のやりがいはありましたが、とても忙しい日々に逆戻りとなりました。

安藤:家庭はどうなりましたか?

荒牧:家庭はまた家内に任せきりになりました。帰国後住んだ場所が家内の実家から30分圏内になったので、実家にも助けてもらいました。

安藤:その頃は、管理職でしたか?

荒牧:帰国後1年で管理職になりました。引き続きプロジェクトにてミッションを果たすために、ギリギリのところまでがんばりました。

【男性中心の激務チームから一転、女性の多い部署のボスへ】

荒牧:そのプロジェクトは2003年ごろ区切りがつき、その後2007年までは同じ部署で国際線システムの開発管理の担当になりました。一転して大半が女性のチームになり、その時の部下3人が結婚・懐妊・育休・出産を経て復職しました。立て続けに育休の部下を持つことになりました。

通常の異動のタイミングでないと人員が一時的に減ることになります。他のメンバーで力を合わせて仕事をまわして行くことになりました。みんなで理解しながら協力しあう感じですね。女性のライフステージの中で、子どもを産み育てることの出来る時期は限られています。出産・育児は今やらないと、5年先、10年先には出来ないことなので、周りでやれることはやろうと力を合わせる雰囲気です。

安藤:男性比率の高い職場では、荒牧さんの年代ですと「大変だったら仕事やめれば?」と言ってしまう上司もいますが。

荒牧:そういう雰囲気は当社にはありませんね。客室乗務員や空港係員など女性に負う部分も多いですし、女性社員がひっぱっているという所もあります。「言ったらひどい目に遭う」とかということではなく、そもそもそういう発想がありません。

安藤:女性に対するダイバーシティも、当時からあったということですね。吉元さんは、入社前からそういうことをご存じでしたか?

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吉元:客室乗務員としての採用でしたので、女性が活躍して行くのだとは思っていました。地上ハンドリングスタッフも女性が多いので、まわりからも「女性が活躍しやすい会社だ」ということは聞いていました。

安藤:吉元さんは社内の試験を受けて総合職に移られ、現在の部署に入られて。そして2年前に荒牧さんが上司として着任されたということですが、それは吉元さんが育休から復職された後だったんですね。現在はどのようなメンバー構成ですか?

吉元:9名男性、女性4名の13名です。女性はひとりが小学生の母で、あとの2人は独身です。

安藤:育休を取った時はどうでしたか?

吉元:私の場合は、客室部門のシステム開発をしていましたので、タイミングについて悩みました。業務上、仕事の引き継ぎ等も少し時間が必要ですので、他の人に迷惑をかけてしまわないか心配だったのですが、以前の上司も「気にしなくていいよ」と言ってくれました。子どもは1月生まれでしたので、1歳2ヶ月で復職しました。

育休前に社内でセミナーが開かれていましたので、そこで休職や復職に関わる情報等を得られましたし、復職された方から「急な発熱などはこう対応しています」といった体験談を聞くことも出来ましたので、事前にいろいろシュミレーションしていました。「子どもが朝、急に発熱した場合は誰にどうお願いするか」などですね(笑)。

安藤:シュミレーションのとおり、うまくいきましたか?(笑)

吉元:かなり綱渡りでしたが、今はなんとか落ち着いてきました。

安藤:復職に際して、不安はありましたか?

吉元:復職後は、それまでとは違う本社システム部門に入りましたので、「特殊な知識が必要かもしれない」と思ったり、勤務地も羽田から汐留に変わったことで不安もありました。でも、上司と話し合う中で、今までの知識や経験を十分活かせることや、育児中であるということにも理解してもらえました。チームのサポートもあり、だんだん不安が無くなって行きました。

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安藤:上司に言われた忘れられない一言はありますか?

吉元:休職前の上司にも、復職後の上司にも言われたことなのですが、「子育てというのは、今後の自分のキャリアにプラスになって行くもので、マイナスになるものではないから、がんばって」と言って頂きました。

安藤:いいこと言うなあ(笑)その方たちは男性ですか?お子さんはいらっしゃるんですか?

吉元:はい、どちらの上司も男性で、どちらの方もお子さんが3人いらっしゃいます。

安藤:復職後は時短勤務ですか?

吉元:はい、時短でした。会議が勤務時間後に設定されていたりした時には、時間の調整をお願いしたりしました。これは、スケジュール管理システム上で「空き時間検索」というものがあり、ブロックをかけ忘れてしまった時に自動的にそこに会議が設定されてしまったんです。それ以降は、気をつけるようにしました。

安藤:スケジューラーにプライベートなこと、「保育園の用事」などと書けますか?

吉元:休暇を取得する時はなるべく具体的な内容を書くようにして、お迎え等で早く帰らなければならないときには、ブロックをかけたりしています。同じ部署の男性管理職の方は「お迎え」などと書いていらっしゃいます。

荒牧:私も、例えば「小学校の入学式」など、休みがどうしても必要だという時にはきちんと書くようにしています。ブロックをしていても、「ちょっとここだけ出てきて頂けませんか」などと会議を入れられたりしてしまうこともありますので(笑)。

安藤:(笑)上司から率先して書いてもらえると、自分も書き込みやすいですよね。今後も、平日に入る行事などの予定がどんどん入ってきますからね。ほかに、自分の部署だけの取組み等はありますか?

荒牧:私の部署はイノベーション推進部で、全グループのワークスタイルイノベーションのインフラ整備を担当しています。ワークスタイルイノベーションというテーマは主管部があってないようなものですから、各部署を繋ぎながら、メール環境などを整備したり、仮想デスクトップを導入したりしています。そうしますと、世界中どこでも自分のデスクトップにアクセスできますので、在宅勤務なども容易になってきています。

ちょうど昨日も、部署のメンバー3人とグループ会社3人の計6人の会議で、そのうち私の部署の私以外2人が自宅からFaceTimeで繋がって会議、ということをしていました。そのうちのひとりは、お子さんの急な発熱で休むことになったのですが、そういうケースにも対応出来ています。

また、この春からは会社電話にスマートフォンを支給し、どこにいても内線がかけられるようになり、ますます便利になりました。また、プレゼンス機能などで在宅勤務でも勤務状況がクリアになっています。

在宅勤務は前日までに申告し、月4日、週1回の取得が目処となっています。これからはパソコンにも電話にも縛られない自由な働き方がもっと進むのではないかと思っています。

安藤:我々世代ですと、育児だけでなく介護等も入ってきますからね。

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荒牧:その通りです。世の中の流れもありますが、会社に長時間かけて通勤し、深夜までいるという働き方ではなく、働き方そのものを変えて行かなければいけない時代だと感じていましたので、この改革は必ず必要だと思っていました。

事業所も、首都圏では汐留、日本橋、羽田空港、成田空港と拠点があり、この間を社員が行き来しています。行った先や移動中でも仕事できるということであれば、効率化が進むと思うんですよね。

吉元:海外など時差のある国との仕事のある方も、フレックスタイムの制度を利用し、勤務時間を夜に設定して、ご自宅からネットを使ってミーティングに参加されたりしています。

荒牧:ANAグループにはあわせて3万3千人の社員がおりますが、業務プロセス改革室の立場で施策を進めています。社内ユーザーからもポジティブなフィードバックをもらっており、手応えを感じています。

安藤:ワークライフバランスも良くなりますよね。

荒牧:今回のインタビューは、イクボスというテーマでしたが、親御さんの介護のために仕事を休んだりとか、本人が体調不良などで通院したりする時など、育児に関わらないシーンでも効果がでると思っています。

安藤:そうですね。家族や自分のケアについて、企業の中で言い出せなかったという日本企業の体質みたいなのが今までありましたが、そういうのはどんどん少なくなって、時間制約も当たり前になって行かないとダイバーシティは難しいと思いますね。現在、グローバル企業は特に過渡期だと思います。

荒牧:ちょうど現在の職場でも、4月からシステム系の会社からインド人の社員に来てもらっています。上司の役員が、組織への刺激のために日本語が話せない人を入れようと。社員としての立場で働いてくれていますが、やはり職場の雰囲気は変わりますね。

【今後のビジョン】

安藤:今後のボスとしてのビジョンはいかがですか?

荒牧:産休、育休を経て復職する女性社員達が、気持ちよく働けて、より生産性を上げ、活躍出来るようにと願っています。本人達のやりがいにつなげるためには、まだまだ出来ることがあるんじゃないかと思っています。

今回このインタビューを受けるにあたり、今まで自分のもとで育休を取得した4人の部下にアンケートをとってみたのですが、みんないろんな意見を書いてくれました。それを読んで感じたのが、「イクボスセミナー」のようなものを社内でできればいいなということでした。復職する人に対してのセミナーはありますが、そういう社員を迎える上司のためのセミナーは、現在のところないんですよね。アンケートをやってみたことで、上司の理解の有無で働きやすさが大きく違ってくることに気付きました。

吉元:ちゃんとそういうことを考えて下さるのだということに信頼と安心感を感じています。

荒牧:年間、800から900人の社員が産休や育休を取得するので、その上司全員をカバーするのは大変だと思いますが、1回受講すればだいぶ違うわけですから、「はじめてのイクボス研修」なるものを制度化出来ればと思います。

安藤:男性の育休取得はいかがですか。

荒牧:これからはアリだと思いますね。昨日の電話会議のシチュエーションはまさにそうでした。奥様がどうしても仕事を休めなくて、2歳の子どもの急な発熱のケアで旦那の方が仕事を休んだ、ということでしたから。

安藤:イクボスが増えると会社の業績が上がると思いませんか?

荒牧:上がりますね、それは間違いないと思います。まさに、今回の部下のアンケートから出てきた回答のひとつに「自分は仕事で会社に貢献したい」という意見がありました。社員のモチベーションが上がると業績は上がりますから。

安藤:吉元さん、こういう上司に出会えて、どう感じていらっしゃいますか。

吉元:ステキですね〜(笑)。時には厳しく指導をして部下を育て、そして育児に対して理解もあり、真剣に一人一人の部下に接していただいています。私たち育児中の社員も甘えてはいけないと思うんです。そこで、お互いに理解しあいながら仕事していけたらいいなと思います。

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安藤:吉元さんも、そのうち「イクボス」になられるかもしれないですものね。

荒牧:そうです。実際に子どもを抱えながら仕事を続けてきた女性として、部下に対して私よりももっと幅広いサポートが出来るようになると思います。

私は週末には市民農園で野菜を作ったり、子どものサッカーチームのコーチをしたり、自宅に職場のメンバーを招いてバーベキューをしたりしています。サッカーコーチを始める前は、週末は疲れて寝ていたりしていましたが、最近ではサッカーチームのお子さん達のお父さん達と知り合い、地元に飲み仲間が出来たんですよね。生活がすごく変わりました。

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<イラスト/東京新聞>

安藤:「イクボス10か条」というものの中に、「まずボスがワークライフバランスを実践する」というのがあるんですが、まさにその通りですよね。ぼくから見ると、荒牧さんはイクボスの条件をすべて満たしています。やはりこういうボスが部下に言うことは全然違うんですよね。

荒牧:結婚して家庭を持った部下も家族で私の家に招いて、野菜を収穫したりしています。家庭を見てもらって、ひとつのモデルとして何か参考にしてもらえることもあるのではないかと思います。特に芋掘りと枝豆のシーズンがいいんですよね。6月のじゃがいも、10月のさつまいも、そして夏の枝豆と。

安藤:ビールが美味しそうですね、ぜひ今度呼んで下さい(笑)。ありがとうございました。

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インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:笹川直子)

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2014年06月26日

第6回 佐竹 隆さん(株式会社メディ・ウェブ 代表取締役社長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第6回は、株式会社メディ・ウェブの佐竹 隆さんが登場。時代の先端を行くITベンチャーの社長は、ダイバーシティな人材をどう活かしているのか?新しい時代の、新しいボスの感性とビジョンについて、東京・虎の門にある本社でお話をうかがった。(FJイクボスプロジェクト

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<佐竹隆さんプロフィール>
富士総合研究所(現・みずほ情報総研)からソフトバンク、フリーランスを経て2007年に株式会社メディ・ウェブの設立に参画。病医院や医療関連企業向けの業務ウェブサービスを提供。患者と病医院、病医院内、病医院と企業の関係性に注力した、クラウド型診療支援サービス3Bees(スリービーズ)は、現在2000以上のクリニックで登録・利用されている。従業員数は開発担当を含めて15人。30歳で結婚、現在43歳。妻(39歳)、娘(中1)の3人家族。FJ会員。

【ボスは年下の外国人・MIT出身・・・ダイバーシティに目覚めた30歳の頃】

安藤:会社員(ソフトバンク)時代はどんな働き方だったんですか?

佐竹:朝7時すぎくらいに会社に来て、夜3時くらいに帰る、という感じでした。アメリカとも仕事をしていたので、現地の時間に合わせて電話会議をしたり、アメリカのニュース配信を翻訳して流すシステムの担当もしていたので、なにかトラブルがあったりすると自分に質問が来るので、とにかく忙しくて、歯医者に行くと寝てしまったり(笑)、そんな生活でした。

ソフトバンク時代に、ある医療系の大きな会社の立ち上げに携わって、ポータルサイトを作ったりしていたのですが、その会社が営業権譲渡で別の会社に事業の一部が譲渡されることになったんですね。その時の上司が、ソフトバンクグループに残るか、譲渡先の会社に移るか、自分で会社を立ち上げるか、その3つの中から選べば自分がサポートすると言って下さったんです。

安藤:それは、ある意味、「イクボス」ですね。

佐竹:そうなんです、とても素敵な方でした。結局、譲渡先の会社の方に移ったのですが、2年ほどそこからソフトバンクに出向するような形で、残った事業を担当していたんです。その時の上司が、自分より年下でした。その頃(2002年)ぼくは30歳で、上司は27歳で外国人、MIT(マサチューセッツ工科大学)出身。「世の中こういう時代なんだ、これからこうなって行くんだ」と強く感じました。

その頃から、ぼくは自分のまわりの方を全員「さん」付けするようにしました。自分より年下の人はたくさん今後出てくるだろうし、プロジェクトの中で社長とか部長とか役職名でよんでいたりすると、どうもやりづらかったりするんです。なので、どんな立場の方でも基本的に「さん」付けで呼ぶのが、とても理にかなっていると思いました。

安藤:それは、ダイバーシティに気付くきっかけでしたね。なかなか一般的な日本企業の中にいるとそういうことに気付けないから、ある意味ラッキーでしたね。

佐竹:まさにそうです。その頃から、週4日仕事をして、ほかの日は自分の仕事をするという形にして、ホームページを作ったりほかのサポートをしたりして、SO-HO向けの求人サイトを自分で運営し始めたのです。

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安藤:その頃、僕と出会ってますね。(注:偶然、佐竹氏と安藤氏は近所に住んでおり、子どもの年が1つ違いであることもあって、同じ保育園に子どもを預けていた時期が。)

佐竹:保育園に行くといるお父さんは、僕と安藤さんくらいだったんですよね。9時30分とか10時くらいに保育園に子どもを連れて行くと、安藤さんがいらして、「一体この人は何をしているんだろう?」と思っていました。あの頃、バギーや自転車でそんな時間に保育園に行くお父さん、いなかったんですよね。

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安藤:少し話が戻りますが、30歳で結婚というと、一番激しく仕事をしていた頃ですね。結婚生活としては働き方は大丈夫だったのですか?

佐竹:彼女も出版社で仕事していたので、土日もかまわず仕事していますし、今はうちの会社で広報として働いていますので、「やれるときにやらないとね」と理解してくれていました。

【自宅オフィスとリモートワークでワークライフバランス】

安藤:結婚してすぐ子どもが産まれ、ちょうど仕事が自宅に移る頃だったんですね。

佐竹:そうなんです、ちょうどそういう時期で。子どもが保育園にあがるころ、自分も自宅にオフィスを作って、会社に行って仕事は持ち帰ってするという形式に変えていたので、育児には良かったと思います。

丁度その頃、妻が仕事の都合で沖縄等に出張すると、自分の実家(山形県上山市)に連れて行くことも何度かありました。新幹線で、父親が一人で小さい子どもを連れているのは珍しかったのか、周りの人からとても助けてもらいました。あと、自宅オフィスだったので、スタッフにも育児を手伝ってもらったりして。ほんの1時間でも見ていてもらえると、本当に助かるんですよね。

安藤:ワークライフバランス的にはうまくまわせていた時代と言えますね。2007年に今の会社を立ち上げということで、その頃は忙しかったと思いますが?

佐竹:まだ事業開発をしているような段階で、ビジョンに対してどのように実現していけるかを会長(楊浩勇氏)と話をして、様々なクライアントに説明している間に仕事が頂けるような状態になり、ちゃんとこちらにコミットしてやらなければならないと。また、事業モデルとして、SO-HOで出来る内容と、チームでやらなければならない内容があるんですが、チーム化して取り組まないといけない感じになってきたんです。うちのCTOはフランス人(マルタン・イヴェリック氏)なのですが、その頃、彼も自宅で仕事をしていました。

安藤:イヴェリックさんは、お子さんは?

佐竹:2人います。とても親日家で、大学院の留学で日本に来て、そのまま日本の企業に就職したのですが、その頃から彼もぼくも自営を始めていたので、大きな案件が来ると、メッセンジャーでやりとりをして一緒に仕事をしたりしていました。2007年の前まではそんな感じで、いろいろな仕事の仕方をしながら、「自分は何をすると一番楽しいんだろう」と探っている感じでした。自分は、何も無いところから道を作るタイプではないのですが、流れの中で「自分はこちらの方が楽しい」と選んでいくように、今までの人生を歩んできた気がします。

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安藤:マネージメント、社員のワークライフバランスなどで、やったことはありますか?

佐竹:以前いた社員で、家族が病気がちな人がいました。彼はリモートワークで家族をケアしながら仕事したいということでしたので、「ぜひそうしたほうがいい」と。うちの会社のリモートワークでもいいし、自分で違うチャレンジがしたいのであればそれでもいいと話しました。それで、円満退社となり、今でもたまに会ったり、うちの会社のイベントの時など遊びに来てくれたりします。

また、CTOも2人目の子どもが産まれたとき、2週間育休のような形で、リモートで仕事をしながら、ずっと家にいるという働き方をしていました。うちの会社は医療に関わっていますので、社員のそういったことは、例えば病気をしたら患者さんやお医者さんはどのように感じるのかということを考えるきっかけになりますし、その人の仕事や人生がより豊かになる経験なんですよね。

また、安藤さんもよくおっしゃいますが、育児というのはある程度時間やタイミングが計算できますよね。あとはその人自身が、会社でどうやりくりするかだと思います。うちの会社は残業があまりありませんので、やりたい人は家に帰ってからでも仕事出来ますし。あと、社員に外国人が多いので(フランス、ポーランド、ウクライナ、アメリカ人が2人と、社員の3人に1人が外国人)、仕事の後に他社の人と会うということみんな積極的にやっていたり、当社でも主催できるように企画中です。決められた時間の中でどう工夫するかというところにクリエイティビティがあって、それを大事にしたいなと思っています。

安藤:それが成長ですものね。もっと効率がよくなって、生産性が上がるということで。

佐竹:社員のモチベーションが、「成長と貢献がどうあるか」ということだと思っています。当社が提供するサービスも最初からマルチリンガル対応になっています。これも、例えば今後、社員の国でも使えるようになればいいと思いますし、やりたいという人にはどんどんやってほしいと思います。

安藤:女性社員は何人いますか?

佐竹:妻を含めて3人です。

安藤:独身の女性が結婚して出産というケースは?

佐竹:それがまだないんです。フルに働かなくていいから、「これをやってみたい!」という行動力のある女性に来て頂きたいです。ぼくらからすると、子育て中の方とかはすごく良いんですよね。当社では、患者さんと、病院、企業という3つの関係性を良くするツールを作ろうとしていますので、自分が怪我したりして病院に行くのも「患者」としての視点になりますし、子育て中で「これがあるといい」という思いがある人が作ってくれると、サービスの細部に神が宿るんです。興味がある人でないと続かないんですよね。

なので、そのシチュエーションにある人、そういう経験がある人が、他人ごとではなく、自分のこととして考えられると思います。あとは、どういうアウトプットが出来るか、そしてどういう働き方が出来るか、ぼくらがどういう風にその方の働き方にアジャストできるか。現在のぼくらの能力でアジャストできない可能性もあるわけですよね。そこが、ぼくらの会社としても成長のポイントとなるんです。ぼくも、海外の社員を採用するにあたってビザの発給方法を学んだりしていますので、ひとつひとつの変化に適応しながらやっていきたいと思っています。

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<イラスト/東京新聞>

【イクボス10か条】

安藤:「イクボス10か条」というのを作っているんですが、どれくらい当てはまりますか?

佐竹:③に関しては、専門家の方に相談したり、他社の就労規則を参考にさせて頂いたりして学んでいます。④に関しては、ベンチャーですので、CTOの育休の様子などみんなが見ていますから、働き方に関してはよく共有できていると思います。⑥は会社立ち上げ当初からクラウドのグループウェアを導入していますし。みんな、自分のスケジュールに予定をどんどん入れていますし、ぼくや会長は家族の予定も書いたりしています。書きたくないことは、「重要」とか書けば良いし、予定が入れられたくないところはブロックしてしまえば
良いですからね。

安藤:だいたい全部、出来ていますね。さすがです。これ、ボスなら当たり前なんだけど出来てない人は巷に多いんだよね。

【不満はチャンス】

安藤:最後に、これから入ってくるだろう若い人たちに、イクボスとしてアドバイスやメッセージがあればお聞かせください。

佐竹:いろいろ試してみた方がいいんじゃないかと思うんですよね。不満はチャンスだと思うんです。どういう風にしたら変えられるのかという視点になりますし。また、ポートフォリオをいくつか持った方がいいと思うんです。大学では建築科に通っていましたが、建築家になるのが一番時間がかかるような気がしていたんです。一人前になるには10年以上はかかるだろうと。でも、結局自分が一人前になるのに、10年以上かかっているんですよね。浅はかだったと思います(笑)。

振返って見ると、30歳目前の頃は、30をいかにノリノリで「これから仕事できるぞ!」とセットアップするかということに目的意識を持っていました。自分はどう楽しく、より豊かに生活出来るか、生きていけるのかと考えていました。そして30過ぎくらいから、あまりにも忙しくなって思いが無くなり、35くらいでふと忙殺されている自分に気がついたんです。

そこで、「自分は何をやると楽しくてより豊かになれるかな」と考えた時に、①ずっと医療に関わってきたので、医療に携わる仕事(メディカル)、②実家が山形なので、地域ビジネスや、ハイパーローカルなアクションをとりたい(地域)(読み聞かせ/※佐竹氏と安藤氏は共に子どもが通った小学校で絵本の読み聞かせボランティアをやっている)、③自分がどういう風に生きていくか、という「生き方」(ライフデザイン)の3つ、すべてやりたいと思いました。

そして、今メインでお金を頂くところと、ボランティアするところ、そして学ぶという3本柱が、うまく入れ替えたりローテーション出来たりすると、より自分の人生が豊かになると思ったんです。以前誰かに言われたのですが、目の前にある選択肢が1つの時は「洗脳」、2つの時は「脅迫」、3つめからようやく「機能的に人が選べる」いっぱいあると迷うのですが、選択肢を持たせる時には3つ以上だと良いそうです。

自分の中では今、この3つのテーマを持ってやっています。年を取ってから突然そういうことをやるには、リスクが高すぎると思いますので、若いうちからやってみるといいと思います。

あと、若い人たちと一緒に仕事やプロジェクトをしたいですね。当然、年上の方々とは今も、色々教えて頂いたりしながら仕事していますが、「これを、こう考えるか!」とか、「この発想、すごいな!」というのがすごく楽しいんです。自分のまわりに、「この人、これ優秀だな!」とか、「この視点があるのがすごいな!」という、新しい視点があるのが楽しいんです。

安藤:若い人と競ってしまう上司もいるからね。

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佐竹:そうならないためにも、自分が組織を作って、そこに関わろうとずっと思っています。お祭りも、神輿を見ているより担いだ方がずっと楽しいですから。若い人のことも、ステレオタイプで見るのではなく、「あなたは何がしたいのか」と質問する力で、その人のクリエイティビティというか、その人の輪郭がみえてくると思うんですよね。質問する力は、ぼくの課題でもあります。

安藤:そういう質問が出来る管理職が増えるといいと思いますね。全部自分でかかえて誰にも相談出来ないという人をたくさん知っていますので、もうちょっと部下を信用していろいろ聞いてみればいいと思う。

佐竹:そういう上司のパターンは、ゴールをはき違えていますよね。自分を守ることがゴールになっている。
「このチームの中でどこの高みを目指すか」とか、「ぼくらどうやってグルーブしてここでいい感じで仕事するか」とかがゴールになっていない。優秀な部下がいた方が楽で良いじゃないですか(笑)。「こいつの手柄なんですよ!」と言い続けて、どんどんチームが成長していけばいいんです。イクボスに限らずどこでもあることかもしれませんが、そういうところで働けない優秀な人が出てくるというのはもったいないと思います。

安藤:そういうところに余裕を持ってマネジメントできるような、意識のチェンジや環境があるといいなと思いますね。みんな余裕が無くなって、家庭のことや地域活動をする時間が無くなって、狭いところをぐるぐる回っているような状況が長年続いたので、佐竹さんのような新しい感性でインパクトのある仕事をしているボスを見ると、元気が出ます。小学校で絵本とか読んでるからね(笑)。そういうシーンの「佐竹パパ」と、会社にいる時の「佐竹ボス」が、僕から見るととても自然に見える。

佐竹:子どもも会社に遊びにくるんですよ、僕だけじゃなくて社員の子どもも。あとその子どもの友達も来たり。会長の飼い犬もたまに来たりするので、夏休みなどはその犬と散歩しに来たりとか。ぼくは、地域活動で知り合った方の息子さんと仲良くなって、その子が友達つれて会社に遊びに来てくれたりもします。

その中学3年生の子とFacebookで友達になったりして、「映画が作りたいんだけど」なんていう相談に「クラウドファンディングっていうやり方があるよ」とアドバイスしたりして。自分の子じゃない子と話していることで、「こういうことを考えるんだ」と参考になったりすることが、よくあります。

安藤:それも地域活動の成果ですね。職場と家を往復しているだけのお父さんは、なかなかそうはなれないよね。

佐竹:そうですね。「何を考えているのか、何を見ているのか」ということを知りたいんです。それが自分たちの会社を良くしていくことにも繋がると思うし、ぼくらの強みを教えてくれることにもなりますから。

「なんで来やすいと思ったのか」とか聞いてみて、その理由を教えてもらえたら、「こうやって人に伝えるとより来てくれるんだ」ということが分かったりしますから。テストマーケティングなんです(笑)。

安藤:今日はありがとうございました。
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インタビューの後、毎週水曜日の社員交流ランチに参加させていただきました。隔週で言語が「日本語」「英語」となっていますが、それぞれの言葉が苦手な社員には、ほかの社員がフォローします。毎回、フリートークのリーダーが決められていて、この日の話題は「映画」。自分の好きな映画について各自が話し、とても和気藹々と盛り上がりました。日頃からの社内のコミュニケーションがうまくいっている様子が、とてもよく分かりました。メディ・ウェブの皆さま、本当にありがとうございました。

インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:笹川直子)
ラベル:イクボス
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2014年06月17日

第5回 金柿秀幸さん(絵本ナビ 代表取締役社長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第5回は株式会社絵本ナビの金柿秀幸さんが登場。
「子どもに絵本を選ぶための情報を集めた参加型絵本紹介サイト」というコンセプトで、2002年4月にオープンしたインターネットの絵本情報・通販サイト絵本ナビを運営する。スタッフ32名中、女性が約7割。男性も3名が育休を取得。会社を立ち上げた経緯や、メンバーへの想いなど、東京にある本社でお話をうかがった。(FJイクボスプロジェクト
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<金柿秀幸さんプロフィール>
45歳。大手シンクタンクにて、システムエンジニアとして民間企業の業務改革と情報システム構築を推進。その後、総合企画部調査役として経営企画に従事。2001年、愛娘の誕生にあわせて退職。約半年間、子育てに専念した後、株式会社絵本ナビを設立し、代表取締役社長に就任。2002年、絵本選びが100倍楽しくなるサイト『絵本ナビ』をオープン。2003年、「パパ's絵本プロジェクト」を結成。 雑誌など各メディアにて絵本紹介、講演など多数。NPO法人ファザーリング・ジャパン初代理事。編書に『幸せの絵本』シリーズ、『大人のための絵本ガイド』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『絵本であそぼ!』(小学館)がある。


【きっかけは社長自身の考え方の変革】
安藤:もともとはどんな働き方だったんですか?

金柿:独立する前は銀行系のシンクタンクでSEとして働いていたんです。仕事は山ほどあるから、毎晩夜中まで働くという職場でした。20代の頃は本当に限界に挑戦している働き方でしたね。夜中の2時頃まで働くことも普通でした。

結婚してからも働き方は変わらず、逆に以前よりも仕事に打ち込むようになりました。結婚して妻がいるから、余計にオトコとして外で仕事をがんばれるという考え方からです。父親が企業戦士でしたから、そのイメージも刷り込まれていたのだと思います。

安藤:それが変わったのはいつからですか?

金柿:父が脳梗塞で倒れたときです。でも最初は、「なぜ、こんなに忙しい時期に倒れるんだ」と腹が立ったというのが本音でしたね。で、4日後になってやっと会いに行き、一時的に半身麻痺になっていた父を見て、「自分はなんて恥ずべき行動を取っていたのだろう」と思いました。人として最低だなと。そこから考え方が変わりました。

その後、妻が妊娠した知らせを聞いて、そのときに、将来のわが家の姿が頭に浮かんだんですよ。「ただいまー」って帰っても、暗い家の中。家族にイライラして、「誰のおかげで飯を食えてるんだ!」なんていう家庭のイメージ。同じ職場の先輩は、子どもに「今度いつ来るの?」って言われたよなんて、誇らしげに語っていて、このままだと自分もそうなってしまうと思いました。ちょうど30代に入ってこれからどう生きていこうかと考え始めた時期。仕事だけして会社で偉くなっても、それでは自分も家族も幸せではない、と気付いたんです。

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安藤:それで会社を辞めて、絵本ナビを立ち上げたんですか?

金柿:会社を辞めて、子育てしながら、子どもとのコミュニケーションツールだった絵本に市場があるのではないかと、絵本ナビを立ち上げました。でも事業が軌道に乗るまではやっぱり仕事中心になってしまって、オフィスに泊まり込みする日もある毎日……。

娘が小学生になる頃、ワークライフバランスの講座に出る機会があり、「日本の労働生産性は先進国中最下位」というデータを見て愕然としたんです。仕事で家庭を犠牲にしなくてはならないのは、俺達の仕事のやり方が下手だからなんだと気付いて、悔しくて悔しくて……。

【ハードワークだけど、子どものために休める会社】

安藤:それで今の会社のビジョンができたんですね。

金柿:「ハードワーク。でも、子どものためならいつでも休める会社」というビジョンを立て、社長である自ら実践することにしました。

社内インフラを整備して、社内SNSとグループウェアで情報を共有しています。北海道にも従業員がいますが会議はオンライン会議ツールで行います。会社にいないと話が進まないということにならないように、会議も極力減らしています。

議論も社内SNSで交換するため、会議の時間を設定することも少なくなり、会議をする場合でも15分から30分程度にとどめています。情報共有を進めているから、子どもの行事はもちろん、急な病気でも気兼ねなく休める。ただし、仕事に向かうときは、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、仕事の権限や責任も与えています。

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安藤:家族と夕食を一緒にできてますか?

金柿:娘が小学生の間は、週5日は家で食事すると決めて実践していました。今は中学生になったのでまた仕事の比率を上げています。娘に「パパがいなくて寂しい」と言われるのも期間限定ですから。率先して帰るようにしています。

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安藤:メディア編集部の竹原さんは、働いていてどうですか?

竹原:前の会社では、会社に来ないと仕事が始まらなかったから、子どもが病気だと両親に休んでもらったり、自分は仕事に出ていても「大丈夫かな」って気になりながら仕事をしていました。

こちらに入社したのは3人目の末っ子が4カ月の時。まだ保育園も決まっていなかったんです。上の子が熱を出したときも、イヤな顔をされず、在宅でも働ける環境を整えてもらってすごく助かりました。「お子さんの熱が下がるまでは、仕事しなくて良いです」なんて言ってくれる会社にびっくりです。でもだからこそ、子どもが治ったらまた精一杯働こうというスイッチが入ります。

安藤:法人営業部の田中さんはどうですか?

田中:前の会社は育休などの制度は使いやすかったんですが、ママキャラになってしまうんですよ。いわゆるマミートラックですね。プロジェクトなどに参加したくても、バリバリ仕事することを期待されているわけではないので、気が引けてしまう。その結果、徐々にやる気も下がっていってしまう、という感じでした。

今までは、子育てしながらなので、仕事の仕方を自分も周りも制限してきたように思うし、自分自身期待されないのは当たり前と思っていました。でもこの会社は、社員として1人前に見てくれるのがうれしいです。

金柿:我が社の場合は、みんなにバリバリ仕事することを期待していますからね(笑)。
一般的な職場では、毎晩深夜まで働く企業戦士になるか、時短で働くアシスタントかの2コースしかないのですが、「決まった時間内で徹底的に仕事する」という活躍の場があることで、優秀な女性もどんどん入社してきてくれています。

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【専門性はありながら、チームでカバーできる】

金柿:子どもがいるいないに関わらず、担当者が急に休まざるを得ない状況はありますよね。それが起きることを前提に、情報共有、仕事の標準化、前倒しの進行などを意識的に進めています。各スタッフは専門性の高い仕事をしているのですが、その人がいないとダメという状況をできるだけ作らないようにしています。

竹原:私の所属するメディア編集部では、仕事の状況だけでなく、子どもの体調など家庭の状況も常に共有できていて、何かあればすぐにサポートしあえる関係作りができています。
夫とも仕事の話が対等にできるようになってうれしいです。「私が今このプロジェクトを担当しているから、この週は子どもが具合悪くなったらパパが休んでね」とか。家族としても、両立の意識が持てるようになりました。
子どもと絵本を読む時間も増えて、そこでひらめいたことが仕事につながることもあります。

田中:週末に子どもと出かけることを隠さずにいられることが嬉しいです。子育てに理解がない会社だと、週末に出かけるから子どもが体調崩すのではと思われる方もいらっしゃるので……。

竹原:平日の保護者会とかも、会社のスケジュールに記入できますからね。子どもの体調が悪くて休むことはできても、保護者会や学校行事で休むのは普通なら気が引けるものですが、絵本ナビではそれが当たり前になっているんです。理解と信頼関係しっかりできていると感じます。

金柿:こういったやり方は、「強い組織を作って高い成果を出し続ける」ための戦略なんです。「会社への忠誠を誓う男性中心の組織で長時間労働を前提に事業を行う」というのもひとつのやり方ですが、我が社は違うやり方で強い組織を作る覚悟をしています。仕事だから、納期やサービスの質を追求するのは当たり前のことですが、やり方はひとつじゃないと思います。子育てを通じた活き活きとした体験や視点をもとに、新しい発想やイノベーションが生まれていて、それが強みになっています。

安藤:バランスの取れた組織が必要だよね。それぞれが自主的に動けて、みんなが生きる組織。それが戦略的にも強い組織になるんじゃないのかな。

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<イラスト/東京新聞>

安藤:「イクボス10か条」にあてはめてみると、自分はどうだと思いますか?

金柿:ほとんどできていると思います。

安藤:すばらしい。夫婦でもパートナーシップが大切だけど、ボスと従業員も信頼関係が大事だよね。今日はありがとうございました!

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インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:高祖常子)
ラベル:イクボス
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