2014年10月29日

第12回 青野慶久さん(サイボウズ株式会社 代表取締役社長)

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イクボス・ロールモデルインタビュー第12回は、サイボウズ株式会社代表取締役社長の
青野慶久さん。クラウドベースのグループウェアや業務改善アプリを軸に急成長を遂げ、社内制度においても抜本的な改革で“ヘルシー”な職場を実現させた。自身も2度の育休をとったイクメンでもある青野社長に、新しいボスの価値観と、次なるビジョンについて伺った。

<青野慶久さん プロフィール>
1971年生まれ、愛媛県出身。大阪大学工学部情報システム工学科卒業後、松下電工(現パナソニック)(株)を経て、1997年、愛媛県松山市にサイボウズ株式会社を設立。2005年4月に代表取締役社長に就任。2児の父として育児休暇を取得するなどイクメンとしても活躍中。

【きっかけは社員の離職率の急激な増加】

安藤:制度改革する以前はどのような働き方でしたか?

青野:僕自身、昭和の人間で働くことが大好きでしたし、進化のスピードが速いIT業界のベンチャー企業で土日がないのは当たり前、仕事のために会社に居続ける自分を「それでいいんだ」と肯定し、「ハードワークで乗り切るぞ!」という感じで働いていました。ただ、会社が大きくなっていくにつれ離職者が増え始めまして……。最初のころは「IT企業はそんなものだ」とも思っていたのですが、2005年、創業9年目で社員の離職率が28%になってしまいました。

安藤:辞めていった理由は?

青野:理由はいろいろで、男性社員は起業したいとか、女性社員は結婚、出産などでした。でも、ここまで離職率が上がってしまうと新たに社員を採用しないといけないし、採用するとなると社員教育などにコストや時間もかかって効率が悪いし、品質維持も大変ですよね。そこで、発想を変え「社員が辞めない会社を作ろう」と思い、残ってくれている社員の意見を聞きながら、社内制度を変えていこうということになりました。

そんな中で最初にできた制度が、「残業しない」という働き方を選べる制度です。「会社に残って仕事したい人は残り、帰りたい人は帰っていい。ただし、残業しない働き方を選んだ人には残業代は出ません」と伝えたら、当時は毎日残業につぐ残業で徹夜する社員も多く、朝出社すると会社の会議室で寝ている社員もいるぐらいでしたので、「社長は社員の残業代を減らしたいのですか?」と猛反発にあいまして……。実際、この制度で「残業しない」働き方を選択していたのは小さい子どもを持つママ社員が少しだけで、彼女たちは申し訳なさそうに早く帰っていましたね。

そんな時に子どもが生まれ、僕自身も育児休暇をとったのですが、「育児しながら仕事をするのはこんなに大変なんだ」と、当事者として初めて気づいたんです。そして、「会社の制度としてはまだまだ足りない」と実感しました。よくよく考えてみると、ママ社員が「子どものお迎えがあるから」などと申し訳なさそうに帰ることっておかしいですよね。むしろ、「子どもを育てている」というのは次の市場を作ってくれているわけだから、「安心して出産や育児をしてください」と送り出してあげないといけないはずです。この辺の考え方を根本から変えようと、会社として「より多くの人が、より成長し、より長く働ける環境を提供する」とポリシーを定め、ワークライフバランスに配慮した制度や社内コミュニケーションを活性化する制度を積極的に取り入れ始めました。

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安藤:具体的にはどのような制度ですか?

青野:社員の働き方についての代表的な制度としては、育児や介護に限らず通学や健康など、ライフスタイルの変化や個人の事情に応じて会社が提示する9つの働き方から勤務時間などを決めることができる「選択型人事制度」や、生産性の向上を目的に、働く時間や場所に制限を設けない新しい働き方の制度である「ウルトラワーク」、最長6年間の育児・介護休暇などが大きな柱です。育児休暇については、男女問わず、子どもの小学校入学時まで取得が可能になっています。

安藤:「小1の壁」問題もありますから、6年間の育児休暇というのはいいですね。

青野:そうですね。うちの会社では、子どもがそろそろ小学生にあがるという社員が出始めてきたのですが、学校が夏休みになると、子どもは学童保育で1日中過ごすことになりますよね。夏休みの学童って、子どもが喜んでいくところでもないし、毎日行きたいようなところでもない。かといって、お母さんが働いているから行き場がない……じゃあ、会社に連れてきたら?ということで、今年の夏休みの時期から子連れ出勤の試験運用にチャレンジしました。

安藤:子どもたちはどこにいたのですか?

青野:ラウンジのスペースに、ついたてを利用して臨時で学童ルームを作りました。子どもたちには会議にも参加してもらったりもしましたよ。

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安藤:社員の反応はいかがでしたか?

青野:もちろん良かったです。なぜ良いのかというと、これらは全て僕が考えたものではなくて、社員皆で考えたものだからです。

安藤:社内に新しい制度を作る委員会のようなものがあるのですか?

青野:サイボウズでは、人事をはじめとする社内制度すべてについて、社員同士で検討する場が用意されています。新しい制度を作りたい場合は人事に申し出ると、それをテーマにしたワークショップが開かれます。ワークショップには誰もが自由に参加して自由に発言でき、開催するたびに必ず議事録にあげ、制度が完成するまでのプロセスをオープンにしながら作っていきます。ですので、「新しい制度が完成した」ということは、「その制度について皆が納得している」という状態なわけです。だから社長の僕はラクなんです。「よし、いけ!」と言うだけですから(笑)。

安藤:なるほど。無理やりトップダウンでいこうとするから社内で摩擦が起きるんですよね。

青野:そうです。現場がわかっていないトップがあれこれ言ってもなにも始まらないと思いますよ。

安藤:皆で決めた制度だからこそ、業務へのコミットにつながりますよね。権利を主張したぶん結果も出さなきゃという。

青野:そうなんです。ただ僕は、「福利厚生だけが目的の制度には絶対しない。福利厚生だけが目的だったらお金を出さない」と常に言っています。僕たちがめざしているのは、良いグループウェアを作ることです。新しい制度によって良いグループウェアを作ることができるのなら、どんな制度でも作っていいといっています。

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【制度改革後、会社全体が“ヘルシー”になってきた】

安藤:他にはどんな制度や施策がありますか?

青野:社員同士の交流を促進しチーム力を高める、すなわち社内コミュニケーション活性化のための施策のひとつに「部活動支援」というものがあります。本部をまたぐ5人以上のメンバーを集めれば部を発足することができ、部員ひとりあたり年間10,000円まで援助しています。

安藤:青野社長も何か部活に入っているのですか?

青野:僕は野球部と映画部に入っています。子どもがいるのであまり参加できないのですが、先日は、炎天下の中野球部の試合にかりだされて大変な目にあいました(笑)。多分僕が部員の中でいちばん下手なんですけど、チームのポリシーが「全員野球」で、1回は必ず試合に出されるんです(笑)。チーム自体は強くて、文京区の大会で優勝しました。

安藤:IT業界で野球部ってめずらしいですよね(笑)。でも、そういうのもコミュニケーションのひとつですよね。

青野:ジェルネイル部もありますよ。部の活動報告は全社の掲示板に上げるのが決まりなのですが、「今日のネイルのデザインはクリスマス風です」とかアップされていたりして。「どうでもいいや」って感じですけど(笑)、このような、横のつながりの中でどうでもいいコミュニケーションがあると、組織は活性化しますよね。

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安藤:そうですよね。家庭でも職場でも、どうでもいいことが言えているかどうかが大事ですよね。居心地が悪かったり緊張感があったりすると、「こんなこと言っちゃいけないんじゃないか」って雰囲気になりますし。

青野:そうなんです。「組織に対してなんでも言える」という安心感があることが大切だと思います。

安藤:これまで取り組んできた働き方の改革や社内コミュニケーション活性化の施策で、社員の働き方は実際に変わってきましたか?

青野:変わってきましたね。残業時間も確実に減ってきていると思います。昔は夜10時で半分くらいの社員が残っている感じでしたが、今は10時まで仕事する社員はほとんどいないですね。8時で半分くらいでしょうか。僕自身も大体8時くらいに退社しています。

安藤:昔からすると考えられないですよね。

青野:はい。昔は夜11時より前に帰るというのはありえなかったですから。その日のうちに帰ろうとすると「おまえは今日最後までやりつくしたのか?」という言葉が耳元から聞こえてくるような状態でしたからね。ただ、ここでもう一度はっきり言っておきたいのは、僕がやりたいのは「皆を早く帰らせる」ということではなく、「自分自身で働き方をきちんと選択してほしい」ということなんです。会社でどんどん仕事したければ会社に残ってもいいし、早く帰りたい人は自由に帰っていい。でも、それを理由に評価はしないということです。

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安藤:目標設定などについてはどのようにされていますか?

青野:社員一人ひとりが半期ごとに目標を立て、その都度上司と面談する形で達成度を確認するという感じです。

安藤:面談の時の社員の様子は変わりました?

青野:昔とは全然違いますよ。全社的に残業が減りましたし、社内のコミュニケーションも活発化して社員ひとりひとりのモチベーションも高まり、会社全体が“ヘルシー”になってきました。実は先日、某大手メーカーの30代の男性が、給料が下がってでもいいからうちに転職したいと面接にきたんです。学歴も経歴も申し分ない彼がいうには、今の会社は月の残業時間が少なくとも月80時間あり、社員がうつ病など何らかの病気を抱えている割合を表す罹病率が、5%〜10%もあるとのこと。「御社の罹病率は何%ですか?」と聞かれたので「ゼロですよ」と答えたら、衝撃を受けていました。うちの会社がいかにヘルシーかということが、客観的に認識できました。

安藤:ワークライフバランスやイクボスが進むとヘルシーな職場になりますよね。罹病率がゼロというのも素晴らしいです。長い目で見たら、会社が疾病手当を払わなくてもいいわけですから。他の会社から優秀な人材がやってくれば採用コストも減りますし。改革の成果が出てきましたね。

青野:本当ですよね。僕自身、子どもを育ててみて気づきました。そもそも働くことって、何のためだっけって。人間性を失ってまで、仕事ってやるべきなのかということです。そこにようやく気づきつつありますね。

安藤:僕も以前IT企業に勤めていました。改革前のサイボウズさんと同様、会社は不夜城で、多くの社員が「会社にずっといることが存在意義」みたいに仕事してましたよ。でも同僚からは、仕事を優先するあまり家庭がぼろぼろになったり、子どもと愛着が生まれていないなどの話を良く聞いていました。本当に、「何のために働いているの?」ってことですよね。青野社長がご自身でそこに気づいたからこそ、今のヘルシーな職場ができたと思います。

青野:そうですね。皆から教えられたことも多いですけどね。

【今後のプランは、独立支援制度、介護の制度、障害者雇用】

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安藤:今後、新しいプランはあるのですか?

青野:社員の平均年齢が上がってきていまして、今は平均年齢が33才なんですけど、中途で入ってきた人も含めて50代〜60代の社員も出始めています。その辺の年齢層の社員に向けた独立支援制度をやりたいと思っています。

安藤:早期退職させようじゃなくてね。

青野:そうです。無理矢理会社から追い出す早期退職はちょっと不幸ですよね。でも、「会社がちょっと背中を押してくれたら新しい道を見つけて頑張れるのに、それがないから会社にしがみつかないといけない」という発想も良くないと思います。大量生産するために均一な仕事しか与えられず、優秀な人材が外に出る機会を失ってしまう……これはおかしいと思うんです。独立支援制度については現在社内で何度もワークショップが開かれていて、実現するための具体的な方策を真剣にディスカッションしています。

安藤:なるほど。新しい独立支援制度、いいですね。ところでサイボウズさんは中国、ベトナムと海外拠点もありますが、海外拠点においてもこれまでの話に出てきたような制度や施策は適応するのですか?

青野:うちは基本的に多様性重視なので、基本的な考え方だけ伝え、あとは現場の判断にゆだねています。国のフェーズが違うので、同じことをやったからといって喜んでくれるとは限りませんので。

安藤:会社がグローバルになると、制度もグローバルになりますね。

青野:そうですね。先ほどもお話しましたが、このようなアイディアは、単なる福利厚生のためだけだと承認はできませんが、社内コミュニケーション活性化につながる投資と考えれば安いものですよね。新しく社内制度を作るにあたっては、この辺の筋をきちんと通しておくことが大切だと思っています。制度と、それを通して実現したい目的を必ずセットにして共有する。どの制度も考え方は同じです。

安藤:そうですよね。企業がワークライフバランスに取り組みはじめると、権利だけを主張してくる社員が増えてくることもあります。「制度なのだから使わせろ」みたいな。でも、「制度は使っていいけど結果も出す」、それができて初めて会社としての成果があらわれるということになるのですよね。

青野:そうです。両方にメリットがあれば続けられますから。「制度と目的を両立させる」というのがベストですよね。

安藤:そうなんです。実はその辺の所で、まだまだ未熟なボスがいるんですよ。例えば時短勤務しているママ社員に向かって、「重要な仕事は僕らがやるから早く帰っていいよ」と平気で言ってしまう。そうすると、ママ社員は「私が家に帰ってから会社で重要なことが進んでいるんだ」と、モチベーションが下がってしまいます。

青野:もったいないですね。

安藤:上司に「早く帰っていいよ」って言われていながら他の社員はたくさん会社に残っているから、取り残され感があるんです。で、モチベーション下げたまま、2人目ができると辞めちゃうという……。

青野:本当にもったいないですね。イクボスは、福利厚生的な視点と「生産性を高める」という視点、両方を両立させることが大事ですよね。

安藤:そうです。そこを僕らも常々言っているんです。ボスの評価というのは“結果”ですから。業績をあげながら働きやすい職場を作り、人も育てていかないといけないんです。青野社長のように自分で子育てしたり、さまざまな社会活動したりなど「ボス自身も人生を楽しんでいないとだめだよ」って言っているのですが、実践できているボスがまだ少ないので、こうしてお話をお伺いしてロールモデルとして紹介しているんです。あと、今後について何か考えていることはありますか?

青野:介護についての具体的な制度をそろそろ考えないといけないですね。明確な介護休暇などはまだないのですが、事例として具体的に出始めているので、制度化したいと思っています。

安藤:大企業にいると、「介護を口に出すと出世できなくなる」というようなマインドが働いていて、家庭で介護の問題を抱えていても中々会社に言い出すことができない40〜50代の中間管理職が増えてきているようです。ですので、40〜50代くらいの社員向けに介護準備セミナーを開き、来たるべき時に備えてもらえるような取り組みを行う企業も増えてきているようです。事前に知識があれば、急にきてもおろおろしないですみますからね。

青野:そうですね。僕たちも、介護に関しては知識を早めにつけといたほうがいいと切に思っています。

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<イラスト:東京新聞>

安藤:青野社長は「イクボス10カ条」はほとんどクリアできているような気がしますけど、どうですか?

青野:そうですね。大体は問題ないと思います。ただ、今申し上げた介護などは、会社にとっては新しい問題であり、その知識が今のところはあまりない状態です。

安藤:育児や介護など時間制約のある人をどう生かすかが、まさにイクボスの仕事ですからね。

青野:そうですね。そういう意味からいうと、まだできていないのがもうひとつあります。障害者雇用です。来年オフィスを移転する予定で、そのタイミングで真剣に取り組もうと思っているのですが、今の時点ではまだ知恵を絞りきれていない状態です。

安藤:障害を持つ方に、新しい仕事を与えたりなどをお考えなのですか?

青野:はい。まだ社内的には理論段階なのですが、名刺の入力とかカタログを並べたりとか、社内にある軽作業って実はいろいろあるのではないかということで、まずはそれを一度全部出してみようということになっています。障害を持つ方もそれぞれスキルが違うので、うまくマッチングしながら仕事を増やししていける方法を考えていく。このようなことに、経営者としてきちんと取り組んでいきたいと思っています。

安藤:ニュージーランドでは、障害を持つ人たちを「スペシャル」と呼びリスペクトして、社会にうまく取り入れていますよね。

青野:日本人って、変な公平感にとらわれてしまって、その人ができないところに目がいってしまいがちだと思うんです。でもそうではないですよね。ひとりひとりに良いところは必ずあるはずで、その良いところを社会全体で生かしていかないと。「この人は何ができるのだろう」と探して行くことも、僕たちの仕事だと思っています。

安藤:できないことではなく、できることを探すということですよね。

青野:そうです。その発想のほうが効率がいいということに皆が気づけば、日本ももう少し、多様化が進むのかなと思いますね。

安藤:そうですね。最後に巷のボスたちにひと言お願いします。

青野:僕自身、一企業の社長として社員のさまざまな働き方に付き合っていくことが、今すごく楽しいです。みんなそれぞれじゃないですか。それをうまく受け入れて、福利厚生的な観点と生産的な観点がぴったりマッチした時の喜びは、何にも変えられないですよね。本人も嬉しいですし、僕も嬉しいですし。最終的に、僕らは人間の幸せをつくるために働いているわけです。「社員だけが苦しんで働き、お客さんだけが喜んでいる」というのはおかしな話です。売り上げや利益ももちろん大切ですが、もっと大事なことが仕事としてあるのではないか……と、社員全員が、このような価値観にシフトしてきているのを実感できてきているので、毎日が楽しいですね。

安藤:先日お会いしたボスも、青野社長と同じようなことを言っていました。「これからは成長ではなく成熟をめざす」と。「顧客満足をめざすと当時に社員満足もめざす。社員を満足させたほうが結果としていい仕事ができる」と。

青野:全く同感です。大切ことは、会社ではなく社会に視点を置くことですよね。会社の中しか見ていないボスは、会社がすべてですよね。だから会社を出た瞬間、役に立たなくなります。フルタイムで働く社員を毎日叱りつけながら働かせることしかできないボスには、残念ながら価値はないと思います。これからは、多様な価値観を受け入れ社会的な視点を持つボスを増やしていくことが大切だと思います。

実は、私ごとですが、来年2月に第3子が生まれる予定です。一人目の時には生後6カ月の時に2週間、二人目のときは毎週水曜日休みを半年間と育休をとってきたので、今度はどのようにとるか検討中です。会社としても、「世界最強のイクボスを出す!」というようなムーブメントを起こしていきたいと考えています。

安藤:おお!僕も子ども3人いますが3番目はこれまた超面白いですよ。またまた育休を取って青野さんがどんな改革をするか、今後のサイボウズにもますます期待しています。今日はありがとうございました!

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ラベル:イクボス
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2014年10月07日

第11回 小川美里さん(医療法人寿芳会 芳野病院 総務課課長 WLB&ダイバーシティ推進室長)

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<小川美里さんプロフィール>
36歳。平成14年(2002年)芳野病院に入職。総務部広報、院長秘書など事務方の仕事を続け、今年3月に課長職へ昇任。1児(小学2年生女児)の母。

【動揺した内示、新たなチャレンジ】

安藤:3月に課長になられたのですが、これは自分から希望してのことだったのですか?

小川: 自分からではなく、お声かけいただき拝命する形でした。ちょうど組織が変わるタイミングで、その時にお話をいただいたのですが、とても驚いてしまって。その場では「分かりました」と返事をしたのですが動揺してしまって、その日、帰宅の道すがら、メンターの方々3人へ次々に電話して、「私に出来ると思いますか?」と質問しました。

すると、「あなたは、ダイバーシティを推進する立場でしょう」というお返事をいただきまして、そこで少し冷静になって、「ああ、そうだった」と考えることが出来ました。でも、自分のこととして消化するのには、少し時間が必要だったという気がします。自分の中では、「40歳ぐらいまでに課長になれたらいいなあ」と漠然と思ってはいたのですが、まさかこんなに早くお話をいただくとは思っていませんでした。

安藤:メンターの方々は外部の方ですか?

小川:そうです。ワークライフバランスやダイバーシティを勉強する中で出会った方々です。動揺した時にすぐに相談出来るというネットワークを持つというのは、とても大事だと思いました。

安藤:外部に、すぐ相談出来るメンターを複数持っている、というのはとても特徴的ですね。現在のお勤め先は、就職先としては何社目ですか?

小川:派遣を入れて4社目です。医療系は初めてでした。もともとはCAになりたくて勉強していたのですが、なかなか採用募集がなくて、接客業を中心に、博覧祭のアテンダントなど自分の興味の赴くままに、いろいろなタイミングとご縁が重なり、12年前に芳野病院に就職しました。

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安藤:ダイバーシティというものが、もともとご自身のテーマとしてあったのですか?

小川:入職してすぐ人事労務担当になったのですが、育休の実績ファイルの中に2枚くらいしか入っていないのを見つけたんです。「国家資格を持っている看護師さんたちが、なぜ辞めてしまうのだろう」と、不思議に思ったんですよね。私自身の母はずっと仕事をしていて、私の中では「おかあさん=働く」という図式が出来上がっていました。

そこでお辞めになる方々に、差し障りの無い範囲内で退職の理由を聞いていると、結婚や出産がきっかけの方もいて、「なぜ”結婚するから”という理由でお辞めになるのですか」と聞くと、皆さん答えが出てこなくなるんです。今からちょうど10年ほど前のことです。

安藤:地域の文化としてまだ残っていたんでしょうかね?東京ではもはやそういう感じはありませんね。会社にもよるでしょうが。

小川:その後も「結婚するので、辞めます」「出産するので、辞めます」と、本当に惜しい方がお辞めになるたびに、もったいないと思っていました。

病院には十種類ほどのクラブ活動があるのですが、平成15年の秋頃、「結婚しても、出産しても、本当は仕事を続けたい」という意見が、ぽろっと出てきたことがあったんです。そこで、「本当は辞めたくない人もいる」ということが分かったんですね。

それから、どうしたら辞めなくて良いのかと、みんなでアイデアを出して行ったら、「院内保育園」「期間限定パート」「ママのかわりにお迎え」など様々な面白い意見が出てきました。それらを書き留めて上司である総務部長に提出したところ、「これなら皆、働き続けられる職場ができるかもしれない」と、すぐに院長へ伝えて下さり、「いろいろアイデアを出してごらん」との返事でした。

それまで、職員同士が意見交換をする場がありませんでしたので自由に意見を交換しあう場として、「職場環境改善提案会議」というものが発足しました。たまたま管理職がいない会だったので、フラットな意見が出やすくて良かったかもしれません。

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安藤:そのころは「ワークライフバランス」という言葉もありませんでしたよね。

小川:そうなんです。その会議では事務局を担当していました。まずは、福岡県の「子育て応援宣言」に登録しよう、ということになり、平成16年に、県内で18番目に登録しました。でも登録直後は具体的な支援策はなく、外部から情報収集を続けて、平成17年施行の次世代法に基づき「時短勤務」や「男性も女性も育休がとれる」など、徐々に支援策を導入していきました。

最初の頃は女性管理職から、「私たちの頃は育休なんて無かった、今の若い世代は甘い」など厳しいご意見を頂くこともありました。

安藤:育休が無かった大変な時代の方々の意見ですね。

小川:もちろん、その世代の方々が道を切り開いて頑張って下さったから今の時代がある、というのは、とても理解出来ます。しかし、その頃は日本の家庭はまだ大家族で、家の中で子どもを預かってくれるおじいちゃんおばあちゃんがいたり、ご近所同士で子どもの面倒を見たりという地縁もあり、誰かが子どもを見てくれる、という体勢があったんですよね。
でも現代では、夫婦だけという家が増え、家の中で子どもの面倒を見てくれる人が誰もいない。地域でも安心して子どもを預けられる場が少ない、という社会的な背景を理解してもらわないと、新しい制度が必要な人たちが安心して使うことが出来ないと思いました。

安藤:どのようにして理解してもらったんですか?

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小川:外部より有識者の方に来ていただいて管理職を対象にお話をしていただいたり、全員参加の研修会でワークライフバランス講座をしたりして、あの手この手の活動をしました。また、廊下ですれ違う上司に、「○○さんは、育休から戻られたら、働き方変わりましたよね!」と声をかけるなど、地道に広げて行きました。そして、だんだんと制度も使われ始め、その中からまた改善点を見つけては修正を繰り返して行きました。

平成17年に、病院全体として「ワークライフバランス」という言葉を取り入れることにしたのですが、ちょうどその頃、「職場環境改善提案会議」の仲間全員が産休や育休に入り、会議自体が一旦お休みになってしまいました。メンバーが戻ってきて会議が再開したのが平成19年です。その頃に会議のメンバーに男性が加わり、初めての男性職員の育休取得がありました。それから1年に1件ほどのペースで、男性職員が育休を取得しています。

育休を取得した男性職員のいる職場は、その後様々なことが良くなったりしていますね。「今まではナポリタンしか作れなかったのが、いろいろなパスタを作れるようになった。
何でも入れたら良いのだと気付いた。」という、休暇中の家庭での気付きをきっかけに、職場でも視野が広がり、様々なことに気付くようになったという事例もあります。

安藤:数字的にはいかがですか?

小川:以前の離職票には退職理由を書く欄がありませんでしたので、結婚や出産を理由に辞めたかどうかというのが分からず、調査が出来ないというのがありますが、平成15年以前は1年間に平均1.7人で2件あるかどうか、という状態で、平成12年までさかのぼって調べたのですが、事例があったりなかったりという結果でした。

ただ、院長が福岡県”子育て応援宣言”で子育て支援をする旨を公表した平成16年に、いきなり6人が育休を取得したんです。その後も取得者が続き、それ以降、希望者がほぼ100%すんなり取得するようになりました。それを見ていたら、やっぱりこれまでお辞めになった方達が、ものすごくもったいなかったな、と思いました。

男性も、平成19年に1人育休を取得しました。病院で育児世代の男性となりますとかなり対象者が少ないのですが、それでもだいたい年に1人くらいは取得しています。直近のパーセンテージは30%ほどです。

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安藤:男性でも取りやすい雰囲気になっているんですね。

小川:NHKの番組でも、今年の6月頃に取り上げられました。自分が取得することで後輩に繋げてあげたいということ、子どもが本当に小さいうちしか関われないかもしれないということ、育児を夫婦でしっかり共有したいことなどがあって、育休取得に踏み切ったようです。

この7月に2週間の育休をとった男性の場合は、その職員の上司が当院で2度の育休を経た先輩ママだったのですが、「何でもフォローするから」とかなりサポートをしてくださったらしく、取得した側の男性部下は、「この上司のためなら何でも頑張ろう!」という思いを強くしたそうです。それだけ理解して応援してくれるわけですから、恩も感じるわけです。

その男性が育休から復帰してきた初日に、偶然会ったのですが、目がとてもキラキラしていて、嬉しく思いました。やはり、週末ちょっとだけ家族と関わる、というのとは全く違うので、本当に良かったのだと感じました。

安藤:小川さんたちが取り組んだことが実を結んでいるようですね。かつてはイクボス的な上司も少なく人材が流出していた。でもこれで病院としても人材不足が改善されてよかったですね。

小川:偶然、平成17年頃は、病院としても看護体勢をより手厚いものにしたい、そのために人材を増やしたいというタイミングだったのです。病院として育休取得を応援するという体勢を整えるとともに、様々な媒体でそれが取り上げられるなどして、働きたいと集まってきてくださる人も増えてきたんですよね。病院の場所は交通の便が必ずしも良いというわけではないこともありますし、その中で働きたいと言っていただけるのは、本当にありがたいです。

安藤:かなりフレキシブルに働けるんですか?

小川:シフト数は57あります。所属によって使える勤務パターンも違うのですが、勤務場所によってシフトチェンジを柔軟に取り入れたりして、出来る限り対応しています。ただ、勤務状況を管理する総務は初め、全て手作業で入力していたのでとても大変でした。さすがに無理が出てきて、管理ソフトを導入していただきました。

安藤:それは患者さんにとっても良いことですよね。担当の看護師がコロコロ変わるより、同じ人が担当してくれた方が良いでしょう。

小川:はい。たまたま、妊娠中の看護師と患者様が話しているところに、出くわしたことがあるんです。その時に、患者様が、「必ず戻ってきてね。あなたから元気をもらってるのよ」と話していたんですよね。

安藤:看護師のモチベーションも上がりますよね。病院に保育所はありますか?

小川:ちょうど今作っている所で、もうすぐ完成します。

安藤:それが出来ればまた、かなり復帰が楽になりますね。

小川:ただ、今の所は、夜勤担当者向けに、夜だけの開所となる予定です。

安藤:それだけでもかなりのセイフティーネットになりますね。

小川:試算の段階では不安も大きかったのですが、院長や上司から、「夜間保育所があるということで、職員の安心に繋がるから」とアドバイスをもらいました。

安藤:東京の大学病院などでは、職員向けの保育所がかなり整備されてきているようです。

小川:パートナーが飲食業だったり製造業などで夜勤があったりすると、やはり夜間保育所の存在は大きいです。北九州市は、製造業と病院で、勤めている人の約4割が占められるので、パートナーに夜勤があるという人は多いんです。

安藤:女性が24時間勤務の仕事で勤めていると、自分が妊娠した時に、育児をパートナーに頼みづらいという人が多いという声が多いんですよね。それで、女性が活躍する職場では、パートナーへの育児や家事参加を促す啓蒙活動に力を入れなければならないという流れになってきています。保険会社やエアラインなどもそうですね。

小川:復帰プログラムの中で、「パートナーをイクメンにしよう!」というコンテンツがあり、厚労省のイクメンプロジェクトの資料を使わせていただいたりしています。でも、女性が男性へ言ってもあまりひびかないということもあるんです。そんなとき、同じ男性である先輩パパからのひと言で、考え方がぐっと変わるという新米パパもいると、よく聞きます。育児や家事に参加する男性がいかにカッコいいかを感じてもらえたらいいですよね。ファザーリングジャパンの、男性が男性に向けて発信する取組みは、本当にいいなと思います。

安藤:ありがとうございます。ダイバーシティ推進室に男性職員はいないんですか?

小川:推進室は今は私だけで、そこから他の部署と連携してやっていくという体勢ですので、他部署の男性職員にロールモデルとして活躍してもらいたいと思っています。その方を見て、新入職してくる男性達が将来的に「自分もああなりたい」と希望を持ってくれるようになってきています。

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【「課長」になってみて実感すること】

安藤:課長になられて半年ですが、マネジメント面ではいかがですか。

小川:想像した以上に難しかったです。内示から異動まで1ヶ月間その間に頭の中だけで悩んでいたのですが、実際になってみたらやるべきことが具体的に見えて、案ずるより産むが易しということを感じました。

安藤:職場での席も替わったのですか。

小川:一度は変わりましたが、何となく落ちつかず今は元の形に戻りました。また、朝礼の時に大きく声を出したりする場面もあるのですが、私は元々声が小さいので、頑張って大きな声を出そうとすると裏返ってしまったりして(笑)。チームのメンバーは、年上の男性職員が5人ですので、外部の方がお越しになった時に、驚かれることもあります。「え、この人が課長ですか?」と(笑)。自分の中でもまだ違和感があります。が、できることから始めていこうと思っています。

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<イラスト:東京新聞>

安藤:「イクボス10か条」というのがあるのですが、ご自身としてはこの条文と照らし合わせて、いかがですか?

小川:「情報共有」という点で、まだ課題があります。上の世代の男性職員は、家庭の事情をあまり話したがらないんですよね。自分で発信していただけたら、チーム全員で仕事の分担がしやすいのですが、家庭の事情などを伏せた状態ですと、それがとても難しいんですよね。

安藤:いろいろ抱えていても相談出来ない男性は多いですね。

小川:そういう場合、どうしたら良いんですか?

安藤:普通に聞いてもうまくいかないこともありますね。以前ロールモデルインタビューで出てくれた会社のケースでは、「おやつタイム」を設けてみんなで話し合う時間を持って、業務としてその時間を作り、上司が積極的に声をかけて話を聞くようになったことで情報共有がうまくいき始めた、というケースがありました(第2回インタビューご参照)。朝礼とかではなくて、ゆるい時間帯にやったのが功を奏した事例でした。あと、スケジュール管理はどのようにされていますか?スケジューラーを使っていますか?

小川:はい、社内LANがあってそこで共有するようにしていたのですが、なかなか浸透せず、今は朝礼で全員がスケジュールを口頭で言うようにして、そこでお互いにスケジュールを控えておいて、人員が手薄になりそうな時にカバーするようにしたりと、アナログ的手法でやっています。最初は「ルーティンワークします。」というひと言で報告が終わったりすることも多く、そこの内容を細かく知りたいのに・・・という場面も多くありました。そこで、私が自分から、スケジュールの内容を細かく言っていくことで、だんだんメンバーも、内容を言ってくれるようになってきました。

安藤:小川さんもお子さんがいらっしゃいますが、プライベートの行事や予定について朝礼で言いますか?

小川:伝えます。なるべく早めに「この日は学校行事があるので、どうしても出勤が出来ないんです」など、根回し的に言うようにしています。自分から発信すると、聞いている人が「実はこの日は実家の用事で」など言い出しやすいようになってくるんです。

安藤:部下の男性の方々も、家ではお父さんだったりしますよね。

小川:家のことを話している時は、仕事の時と表情が違いますね。親近感がわきます。また異動してすぐの頃は、私自身もすごく意気込んでいて、肩に力が入ってしまっていたので、からまわっていた時期があったと思うんです。

安藤:初めての課長では仕方が無いですよね。

小川:変に気負いしていた時期に、上司から「ゆっくり行こうや」と声をかけられたりしました。

安藤:それは良い上司ですね(笑)。タイミングが良かった。野球で投げ急いでいるピッチャーに監督が出てきてひと声かけるような。

小川:そのひと言は響きました・・・からまわっていることに気付いて、ものすごく恥ずかしくなりました。

安藤:それを経験して、またボスとして成長していけば良いですからね。ご自身は、定時で帰れていますか?

小川:今は保育所開所の準備で忙しいですが、だいたい定時の17時30分から18時くらいまでの間で帰るようにしています。自分が帰らないと、みんなも帰りにくいと思いますので、今後は、「長時間だけは評価せず、工夫して効率を上げているところを評価する」という風に変えて行こうかと思っています。

安藤:そういうアクションが大事ですね。

小川:私が入職したころと比べて、職員数は約100人増えているのですが、総務の人員はそんなに増えていないのです。ということは、今までと同じやり方では仕事がまわって行かないのです。今年度の下半期は、その改善に本腰を入れて取り組みたいと思っています。

安藤:かつてのやり方が良かった時代もあったと思いますが、そのやり方のまま仕事量が増えると、徒に残業時間が増えてしまう人もいると思いますので、そこはボスが工夫をして、みんなが健康的にちゃんと働けるようにしていくことが大切になってきますね。

小川:本当に、健康で仕事をするのがとても大切です。無茶しすぎて体調を崩してはいけませんね。

安藤:部下の健康管理も、上司の大切な仕事ですね。僕も以前部下がいた時に、「無駄な残業は評価に響くよ」と言っていました。上司が言ってくれないと、仕事のやり方を変えられず、自分で残業を減らせない部下というのは多いですからね。

小川:ずるずる居残る中で雑談が出てきたりすると、今度は「10分でも早く帰りたい!」と必死で仕事をしている人にとっては集中を妨げるものになってしまいます。どちらが効率が良いかというと、やはりだらだら残らず、高い生産性で仕事を片付けて定時で帰ることなんですよね。

でも、効率ばかりを重視しすぎると職場がギスギスしますので、バランスを見ながら改善を進めて行きたいです。主任の頃は、本当に楽しく仕事ができていたのですが、今はまだ慣れていませんので、出来るまでは必死にやってみようと思っています。でも、休日はヨガに行ったりアロマテラピーの勉強に行ったりしています。

安藤:いいですね。リフレッシュは大事。休日はエネルギーを蓄える日です。家にいても仕事のことしか考えられない人は、だんだん疲弊します。「休む」ということは「インプット」であるという感覚を日本人はもっと持つべきです。育児休業も「休む」=「怠けてる」「遊んでる」というイメージを持つ人がまだまだ多いのですが、その時間は「親になるトレーニングをしている」「親子・家族の関係をクリエイトしている」という感覚を、ボス達がもっと持たなければいけません。

小川:ワークライフバランスを取り入れた初期の頃、残業をしない方向でと発信していたら、「自分は年俸制だから、いくら残業をしても会社から残業手当が出るわけではない」という意見が出たことがありました。そこで私が「光熱費が発生しています」と言ったら、場が凍り付いてしまって(笑)。私も言い方が悪かったかもしれませんが・・・最近は言い方を工夫するようにしています(笑)。

【今後のビジョンについて】

安藤:今後のビジョンはいかがですか。

小川:まずは自分の部署からなんですが、ひとりひとりが「ここで働いているのが楽しい」と思ってもらえるような職場にしていきたいと思っています。でも、ただの仲良しチームという感じではなく、きちんと成果を出して行ける組織にしていかなければいけないとも考えています。特に総務は、数字として目に見えるということが少なかったのですが、それでも全く数字が関係ないというわけではないんですよね、そこでかかっている経費をダウンさせたり、自分たち自身のパフォーマンス上げたりとか。大変だなと思う一方で、やりがいがあるな、と感じています。

安藤:ボス自身がそういう風に思える、言えるというのはとても大事ですよ。部下がそれを見て、モチベーションが上がってきますから。

小川:安藤さんのように、ゆとりで言えるようになりたいですね(笑)。まだまだ新米、ひよっこで、体力も能力もまだまだですので、そこをクリアにして「みんな楽しそうで良かった」と言えるようになりたいです。

安藤:ボスですから結果を出さなければならないし、そこで「サラリーマン」をやらずにクリエイティブに楽しむというのが大事ですよね。あとは、何かの縁で一緒に働いているわけだから、同じ職場の人たちの幸せも達成してほしいなとは思いますね。長い人生で見たら子育てもそうだけれど、いつも笑顔というわけにはいかなくても一緒にいる限られた時間の中でお互いを高めあって成長して行けたらと思う。パートナーシップだと思うんですよね、夫婦だけじゃなくて上司と部下も。会社の中でもお互いの生き方を大事にしてあげるというのは大切なことです。

小川:これからは育児と介護が重なって大変な職員も出てくると思うんです。今のうちに業務を圧縮して、10の力ではなく8の力で仕事を回して行けるようになれたら、不測の事態が出てきてもみんなでなんとかカバーして行けますよね。

安藤:その感覚、大事ですよ。自分もそういう風にした方が良いです。いつもフルでやっていると仕事がたまってきて、優先順位を間違えたりしますから。僕も若い頃はそうでした。

小川:午前中と午後の仕事の配分は、どうなさっているんですか?

安藤:かなりぎゅっと濃縮して仕事するようにしています。人間、集中するとその分疲れますからね。朝シャッターを開けて、仕事が終わったらシャッターを閉めるイメージです。昔は書店をやっていたので、その時に身に付いた感覚ですね。24時間シャッター開けっ放しは健康的ではない。メリハリを付けて仕事することが大事ですね。ところで昇進が決まった時のご主人の反応はいかがでした?

小川:反応は普通でした、「あ、そうなんだ。倒れないように、自分を追い込まないように」と言われました。でもそれが本当にありがたかったです、大喜びするでもなく反対するでもなく。そこから、目に見えないサポートがとても増えました。私自身、3月から6月くらいまで今よりもいっぱいいっぱいになっていたのですが、私が帰宅するとご飯を作っていてくれたり、3月から洗濯は夫の方がやってくれています。家事分担を10で分けるとすると、間違いなく向こうが8やってくれています(笑)。

安藤:今は移行期だから(笑)。家族がそうやってサポートしてくれると、モチベーション上がりますよね。「これだけやってくれてるし、早く帰ろう!」とかね。お子さんはいかがですか?

小川:私が帰宅してそのままソファーで寝入ってしまっている姿を何度か見ているからか、タオルをかけてくれたりします。先日は、疲れて寝てしまった私の目の前に、ヤクルトを置いておいてくれたんです(笑)。

安藤:ヤクルトかあ(笑)。

小川:以前、私が栄養ドリンクを飲んでいるのを娘が見て「私も飲みたい!」と言われた時に、「これはまだダメ!あなたの【元気が出る魔法のお薬】はこっち」と、ヤクルトを飲ませたんです(笑)。それからずっと、「元気が出る魔法のお薬」だと(笑)。

安藤:なるほど、その魔法は元気が出ますね(笑)。公私ともに充実の小川さん。こういう素敵な女性ボスがいるんだということが、若い女性社員の励みになりますね。

小川:逆に、「こんな私でもなれますので、皆さんぜひチャレンジしてください!」と言いたいです(笑)。

安藤:最後のひと言、バッチリ決まった(笑)。ありがとうございました!

小川:ありがとうございました。

小川美里さん①.JPG

(筆:笹川直子)
posted by イクボスブログ at 15:54| Comment(0) | インタビュー | 更新情報をチェックする
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