2014年07月15日

第8回 佐藤善和さん(日立ソリューションズ 金融システム事業部第一本部本部長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第6回は株式会社日立ソリューションズ 金融システム事業部第一本部本部長、佐藤善和さんが登場。現在は約360名の部下(女性が1割)を管掌。今年度より、本部長特命事項としてダイバーシティ推進組織を本部で組成して、具体的な本部活動に着手しはじめたとのこと。従業員との関係などについて、部下であるご夫婦、浅野さん、大村さんにも同席いただき、お話を伺った。(FJイクボスプロジェクト

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<佐藤善和さんプロフィール>
54歳。1978年に入社。2005年主任技師(課長職)、2008年担当部長(部長職)、2011年本部長職となる。奥様と長男(高1)、長女(中2)の4人家族。ご自身は、会社制度の育休・褒章休暇はこれまで取得経験なしとのことですが、お子さんの学校行事などへは、仕事より優先で出席していたとのこと。


【自分自身は、家庭を顧みない働き方だった】
佐藤:最初は銀行のシステム構築を担当していました。ITシステムへの投資が活発な時代で、システムを作っても、作っても追いつかない状況。20~30代のときの働き方は、本当にハードでしたね。朝8時半頃に出社して、夜中の12時をまわって帰ることも珍しくありませんでした。出会いもなかなかありませんでしたから(笑)、社内結婚して、妻は仕事を辞めて専業主婦になりました。妻が専業主婦になったから、なおさら「子育てはよろしく」っていう意識の中で、生きてきてしまいました。
子どもの学校行事には行きましたが、日々の子どもへの対応はできませんでした。それに、自分だけ早く帰るのは、メンバーに迷惑をかけてしまうと思っていました。

安藤:お子さんが生まれたときはどうでしたか? 立ち会い出産はされましたか?

佐藤:立ち会い出産は希望していました。ちゃんと休みも取らせてもらいましたよ。でも結局帝王切開になったので、出産のときには立ち会えませんでしたが。

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安藤:金融ソリューション本部の大村さんは1歳のお子さんがいるんですよね。どうですか?

大村:里帰り出産ということもあり、予定日前後で夫は1週間の休みを取り、病院には2泊してくれました。しばらく実家で過ごしてから、こちらに戻りました。

安藤:夫の浅野さんも、金融ソリューション本部なのですね。お休みを取りたいと会社に言うのは大変じゃなかったですか?

浅野:「妻が出産の時に1週間休みたい」と上司に伝えたら、妻のことを知っていることもあって、躊躇なく「どうぞ!」って感じでしたね。

大村:妊娠4カ月のころに会社で飲み会があったので、そのときにみんなに報告しました。早い時期に伝えておいたのがよかったかもしれません。みんなびっくりしながらも、「おめでとう!」って言ってくれてうれしかった。「ぜひ、出産後は復帰して欲しい」と言ってくれました。そんな感じで、言い出しにくいというようなことは、全くありませんでした。一緒に働く先輩にも2人お子さんがいて、子どものことも話しやすい雰囲気なんです。

浅野:2人は部は同じですが所属が違うので、いつみんなに妊娠のことを伝えようかって相談していました。飲み会に結婚式にも来てくれたメンバーが集まることになり、そこで発表しました。みんな「おめでとう!」って、言ってくれました。育休は1週間取りましたが、もともと長期に取るという意識はなかったですね。でも、2人目の子どもができたら、もっと長期間の育休を取りたいと思っています。

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【制度よりも、取りやすい雰囲気やコミュニケーションが大事】
安藤:御社は独自の育児支援制度などがあるんですか?

佐藤:とりたてて独自の制度があるわけではありません。それよりも、「育休をちゃんと取れるか」というのは、取る方の気持ちに抵抗感があるかもしれませんね。結婚して退社してしまう人も、少なくはありません。会社組織として、育休をちゃんと取って、復職してもらうということを進めていく必要があると思います。

安藤:大村さんは、育休をどのくらい取りましたか?

大村:育休は1年間取りました。復帰の3カ月前に育休取得中の人たちの懇談会がありました。年に2回実施されていて、いろんな部署の人が30人くらい集まります。育休から復帰した先輩方のパネルディスカッションがあったり、「職場復帰前には上司と面談するといいですよ」などのアドバイスをいただいたりしました。

今は時短勤務をしています。打ち合わせも日中早い時間に行ってくださるなど、配慮いただいています。プロジェクトにも入っていますが、夜遅くまで働かなくてはならない仕事ではないので助かります。職場復帰歓迎会も、子連れで行ける店で平日の業務終了後に開いてくださいました。

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安藤:佐藤さんは、上司として心がけていることなどありますか?

佐藤:「困ったことがあったら、言ってね」と伝えています。会社としては、育休などの制度を持っているけれど、現場の管理は上司の仕事ですから、そこは上司が仕事の調整をして、部下が育休を取りやすくすればいいわけです。

奥さんの体調が悪いとか、子どもがけがをしたとか、急に休まなくてはならないこともありますが、すべてスケジューラーに書いてメンバーと共有する、わかっている予定は早く宣言しておくことが大切だと思います。たとえば、休むことが決まってなくても「妻の体調が悪いので、休むことがあるかも」っていうことでもいいわけです。共有しておくことで、ほかのメンバーがその人が休むことになったときのフォローや体制をつくる準備ができます。

【部下にも家庭を大事にして欲しい。自分自身も家族の時間を取り戻し中】

安藤:佐藤さんが、そのように考えるようになったきっかけは何ですか?

佐藤:かつての自分が仕事優先で、家庭を顧みていなかったという罪悪感もありますね(笑)。だから部下には、家庭も大事にしてもらっています。家庭も顧みず長時間労働になって、体をこわして辞めることになるのは、会社にとっても本意ではありません。

「年休を取れ」と人に言うだけじゃ、部下が取りにくかったりしますから、まずは自分からやっています。夕方もほぼ定時退社しています。私の子どもは高校1年生と中学2年生ですが、今まで関わってなかった分を取り戻している感じでしょうか。現在では、残業をすればいいと言う考えは変わってきていると思います。プロジェクトにもよりますが、早めに帰る人も増えてきていますね。

安藤:飲み会とかはどうですか?

佐藤:部下の顔を見て、飲みに行きたい、話したいような人がいれば、金曜日とかに声を掛けています(笑)。平日はもちろん、「どうしても仕事をここまで片づけて」っていうことはあると思いますが、帰りが遅くなりがちの人には、「もう帰った方がいいんじゃない」とか「お休み取ったら」とか、声をかけるようにしています。早く帰ったり、休みにくい人には、周りからの後押しも大切ですね。

浅野:新人で入社したときに、佐藤さんが上司でした。結婚式に来てもらったり、育休取得の相談もさせてもらいました。

大村:ママ友だちが勤務地が変わって家から遠くなったときに、「早く帰った方が良いよ」って声をかけてくださったり。上司がそのような対応をしてくれると、本当に働きやすいです。

浅野:家に帰って、子どもが眠った夜に、夫婦で仕事の話をすることもありますね。

安藤:ワークライフバランスを実践して、朝4時とか5時から早起きして、ひと仕事しているパパも多くいますよ。

浅野:子育てしていると時間的な制約が増えていくけれど、その中でいかに数字を出すかっていうのが課題ですね。

佐藤:上司としても、自分の右腕左腕をつくるのが大事と言っています。「自分しかできない」ではなく、いざとなったら「頼む」と言えること。それができることが、結果、組織として強くなっていくのだと思います。大きな会社ですから、まだまだ部署によっては、「他の人に頼むなんて、甘えたこと言っているんじゃない」という考え方のところもあると思いますが。でも、「ダイバーシティ推進本部長として、引っ張っていって欲しい」と言われていると思っていますので、わからない部分もありますがどんどん発信していきたいと思っています。

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【メンバーの状況を把握することで、働きやすい環境を作れる】
安藤:イクボスとして、どんなことに力を入れていますか?

佐藤:メンバーとのコミュニケーションから始めています。たとえばいつも始業に遅れてくる男性がいて、話を聞いてみたら「共働きで自分が子どもを保育園に送っていて、始業ぎりぎりか遅れてしまうことがある」と言うことがわかったり。それぞれの事情を知れば、配慮したり、メンバー間で調整することができます。部下に働きやすい環境を提供するのも本部長(上司)の仕事だと思っています。

安藤:育児中もそうですが、家族の介護をしなくてはならない人が、今後増えてきますからね。育児よりも、介護の方が大変です。上司がちゃんと状況を把握して理解していることはとても大事だと思います。

佐藤:「環境がいいから働き続けられる」ではなく、それが「当たり前になる」ことが大切だと思います。

大村:実は4年前くらいに仕事を辞めて、実家の福岡に帰ろうと思った時期があったんですよ。でも、そのときに「このプロジェクトだけ、頑張ってみろ」って、上司に言われて。そのプロジェクトで、夫と出会いました(笑)。

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<イラスト/東京新聞>

安藤:佐藤さん、「イクボス10カ条」に当てはめると、いかがですか?

佐藤:制度を変えたりしているわけではありませんが、6割くらいできていると思います。

安藤:浅野さん、佐藤ボスの印象はどうですか?

浅野:新人の時から見守ってもらってるので、頼りになるボスです。無理矢理ではなく、コミュニケーションを取りたそうな人を見つけて、声をかけてくれたり、話を聞いてくれる。それが自然体でできる方です。見習うところがたくさんあります。

佐藤:最近は、ちょっとうざいって言われることもありますけどね(笑)。

安藤:それだけ、メンバーのことを見ているってことですね。ありがとうございました!

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聞き手:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
筆:高祖常子

ラベル:イクボス
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2014年07月08日

第7回 荒牧 秀知さん(ANA 業務プロセス改革室 イノベーション推進部部長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第7回は、ANA業務プロセス改革室 イノベーション推進部部長の荒牧秀知さんが登場。激務だった営業部門時代、価値観が変わった海外勤務。その後帰国して管理職に。システム開発部署へ異動し男性中心のチームから一転、女性の多いチームのボスになり育休取得する部下のマネジメントを経験しイクボスの道を行く。家庭では3児の父親として地域活動も満喫する荒牧さん。部下である吉元恭香さん(1児のママ)にも同席いただき、東京・汐留の本社でお話を伺った。(FJイクボスプロジェクト

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<荒牧秀知さんプロフィール>
50歳。大阪出身。1988年ANA入社。羽田空港、東京支店、営業本部、ロサンゼルス支店、営業システム部、グローバルレベニューマネジメント部など歴任し、現職。これまで10人の部下が育児休業取得後、職場復帰している。家族は妻と3人の子供の5人家族 (高3長女、高1長男、小5次女)週末は地域のサッカーチームのコーチとして次女とサッカー三昧 & 妻とともに市民農園での野菜作りを楽しむ。

<吉元恭香さんプロフィール>
1997年ANA入社(客室乗務員)。2008年4月1日付で総合職掌へ転換 。同年11月に客室本部付育児休職。2010年3月1日、復職しIT推進室(現業務プロセス改革室)へ配属。

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【仕事漬けの激務の日々】

安藤:最初はどんなお仕事でしたか?

荒牧:客室乗務員のスケジュールを作成・管理する部署でした。当時、女性が1,300人ほどいまして、その後も女性の多い職場を多く経験しました。また、男女雇用機会均等法施行の直後でしたので、女性総合職も入社してきた頃でした。

安藤:ご結婚はいつ頃ですか?

荒牧:1995年、31歳の頃です。当時は営業部門で国内線の座席管理の仕事をしていました。航空機の座席を売り分ける担当です。一年を通して忙しくしていました。

安藤:よく出会いがありましたね(笑)

荒牧:職場結婚でしたので(笑)

安藤:日本に職場結婚が多いのは長時間労働のためだという説もありますよね(笑)長く一緒にいることで情が移ると。

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荒牧:同じチームのメンバーでした(笑)。 結婚の翌年に長女が産まれました。結婚した頃は営業本部に異動していましたが、そこもまた激務の部署でした。ちょうどあるプロジェクトメンバーになり、残業も多い忙しい時期でした。当時は家内をほったらかしで、私は仕事漬けでした。

安藤:奥様からはクレームはありましたか?

荒牧:「今日誰とどういう仕事をしていた」という話をすると大体職場の様子が分かるという状態でしたので、とても理解してくれていました。

【ロサンゼルスで大きく変わった人生観】

荒牧:1998年にロサンゼルスに転勤になったのですが、それが私にとってのターニングポイントでした。配属先は北米全体のお客様のご予約や発券のサポートをする予約案内センターで、50人くらいの組織でした。そのうちの6割くらいが日本人、日系人。残り4割が日本人以外というメンバー編成でした。アメリカ人、フランス系、イタリア系、フィリピン系、韓国系、インド系など、様々なバックグラウンドを持つ社員がいました。また残業するという文化が現地にはありませんでした。

カリフォルニア州というのは全米の中でも労働法などで最先端を行く場所でした。カリフォルニア州で始まった事が全米に広がって行く傾向がありました。当時、組織管理や業績評価、コーチングといったものを実地で学ぶ機会があったことはとても良かったと思います。日本にいた時には全く知らない世界でした。

18時が終業時間でしたが、私自身20時まで残るのが年に何回かという感じで、みんなが帰った後に後片付けをして、19時には家に着いている状態でした。通勤も車で10分だったんです。

私の渡米は2年間のプログラムで家族も帯同しました。家内と2歳になる娘と一緒に行きましたが、私にとっては娘と過ごせる貴重な機会でした。近くにビーチや公園のある治安のいい場所に住んでいたこともあり、貴重な時間を持つことができました。

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安藤:娘さんはその時のことを覚えていますか?

荒牧:4歳で帰国しましたので覚えてはいないようですね、写真やビデオで残っているだけで。1年後に長男が産まれました。現地で出産に立ち会え、とても得難い体験をすることができました。

2年で帰国し、システム系の職場に配属になりました。運賃レベルに基づいて座席販売の配分を最適化するためのシステムを導入するプロジェクトのメンバーになりました。男性中心の小さなチームで、どんな業務プロセスにし、どのシステムを採用するかを検討するために、世界各地のパートナー航空会社をまわったり、またベンダーと調整・交渉したりしていました。仕事のやりがいはありましたが、とても忙しい日々に逆戻りとなりました。

安藤:家庭はどうなりましたか?

荒牧:家庭はまた家内に任せきりになりました。帰国後住んだ場所が家内の実家から30分圏内になったので、実家にも助けてもらいました。

安藤:その頃は、管理職でしたか?

荒牧:帰国後1年で管理職になりました。引き続きプロジェクトにてミッションを果たすために、ギリギリのところまでがんばりました。

【男性中心の激務チームから一転、女性の多い部署のボスへ】

荒牧:そのプロジェクトは2003年ごろ区切りがつき、その後2007年までは同じ部署で国際線システムの開発管理の担当になりました。一転して大半が女性のチームになり、その時の部下3人が結婚・懐妊・育休・出産を経て復職しました。立て続けに育休の部下を持つことになりました。

通常の異動のタイミングでないと人員が一時的に減ることになります。他のメンバーで力を合わせて仕事をまわして行くことになりました。みんなで理解しながら協力しあう感じですね。女性のライフステージの中で、子どもを産み育てることの出来る時期は限られています。出産・育児は今やらないと、5年先、10年先には出来ないことなので、周りでやれることはやろうと力を合わせる雰囲気です。

安藤:男性比率の高い職場では、荒牧さんの年代ですと「大変だったら仕事やめれば?」と言ってしまう上司もいますが。

荒牧:そういう雰囲気は当社にはありませんね。客室乗務員や空港係員など女性に負う部分も多いですし、女性社員がひっぱっているという所もあります。「言ったらひどい目に遭う」とかということではなく、そもそもそういう発想がありません。

安藤:女性に対するダイバーシティも、当時からあったということですね。吉元さんは、入社前からそういうことをご存じでしたか?

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吉元:客室乗務員としての採用でしたので、女性が活躍して行くのだとは思っていました。地上ハンドリングスタッフも女性が多いので、まわりからも「女性が活躍しやすい会社だ」ということは聞いていました。

安藤:吉元さんは社内の試験を受けて総合職に移られ、現在の部署に入られて。そして2年前に荒牧さんが上司として着任されたということですが、それは吉元さんが育休から復職された後だったんですね。現在はどのようなメンバー構成ですか?

吉元:9名男性、女性4名の13名です。女性はひとりが小学生の母で、あとの2人は独身です。

安藤:育休を取った時はどうでしたか?

吉元:私の場合は、客室部門のシステム開発をしていましたので、タイミングについて悩みました。業務上、仕事の引き継ぎ等も少し時間が必要ですので、他の人に迷惑をかけてしまわないか心配だったのですが、以前の上司も「気にしなくていいよ」と言ってくれました。子どもは1月生まれでしたので、1歳2ヶ月で復職しました。

育休前に社内でセミナーが開かれていましたので、そこで休職や復職に関わる情報等を得られましたし、復職された方から「急な発熱などはこう対応しています」といった体験談を聞くことも出来ましたので、事前にいろいろシュミレーションしていました。「子どもが朝、急に発熱した場合は誰にどうお願いするか」などですね(笑)。

安藤:シュミレーションのとおり、うまくいきましたか?(笑)

吉元:かなり綱渡りでしたが、今はなんとか落ち着いてきました。

安藤:復職に際して、不安はありましたか?

吉元:復職後は、それまでとは違う本社システム部門に入りましたので、「特殊な知識が必要かもしれない」と思ったり、勤務地も羽田から汐留に変わったことで不安もありました。でも、上司と話し合う中で、今までの知識や経験を十分活かせることや、育児中であるということにも理解してもらえました。チームのサポートもあり、だんだん不安が無くなって行きました。

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安藤:上司に言われた忘れられない一言はありますか?

吉元:休職前の上司にも、復職後の上司にも言われたことなのですが、「子育てというのは、今後の自分のキャリアにプラスになって行くもので、マイナスになるものではないから、がんばって」と言って頂きました。

安藤:いいこと言うなあ(笑)その方たちは男性ですか?お子さんはいらっしゃるんですか?

吉元:はい、どちらの上司も男性で、どちらの方もお子さんが3人いらっしゃいます。

安藤:復職後は時短勤務ですか?

吉元:はい、時短でした。会議が勤務時間後に設定されていたりした時には、時間の調整をお願いしたりしました。これは、スケジュール管理システム上で「空き時間検索」というものがあり、ブロックをかけ忘れてしまった時に自動的にそこに会議が設定されてしまったんです。それ以降は、気をつけるようにしました。

安藤:スケジューラーにプライベートなこと、「保育園の用事」などと書けますか?

吉元:休暇を取得する時はなるべく具体的な内容を書くようにして、お迎え等で早く帰らなければならないときには、ブロックをかけたりしています。同じ部署の男性管理職の方は「お迎え」などと書いていらっしゃいます。

荒牧:私も、例えば「小学校の入学式」など、休みがどうしても必要だという時にはきちんと書くようにしています。ブロックをしていても、「ちょっとここだけ出てきて頂けませんか」などと会議を入れられたりしてしまうこともありますので(笑)。

安藤:(笑)上司から率先して書いてもらえると、自分も書き込みやすいですよね。今後も、平日に入る行事などの予定がどんどん入ってきますからね。ほかに、自分の部署だけの取組み等はありますか?

荒牧:私の部署はイノベーション推進部で、全グループのワークスタイルイノベーションのインフラ整備を担当しています。ワークスタイルイノベーションというテーマは主管部があってないようなものですから、各部署を繋ぎながら、メール環境などを整備したり、仮想デスクトップを導入したりしています。そうしますと、世界中どこでも自分のデスクトップにアクセスできますので、在宅勤務なども容易になってきています。

ちょうど昨日も、部署のメンバー3人とグループ会社3人の計6人の会議で、そのうち私の部署の私以外2人が自宅からFaceTimeで繋がって会議、ということをしていました。そのうちのひとりは、お子さんの急な発熱で休むことになったのですが、そういうケースにも対応出来ています。

また、この春からは会社電話にスマートフォンを支給し、どこにいても内線がかけられるようになり、ますます便利になりました。また、プレゼンス機能などで在宅勤務でも勤務状況がクリアになっています。

在宅勤務は前日までに申告し、月4日、週1回の取得が目処となっています。これからはパソコンにも電話にも縛られない自由な働き方がもっと進むのではないかと思っています。

安藤:我々世代ですと、育児だけでなく介護等も入ってきますからね。

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荒牧:その通りです。世の中の流れもありますが、会社に長時間かけて通勤し、深夜までいるという働き方ではなく、働き方そのものを変えて行かなければいけない時代だと感じていましたので、この改革は必ず必要だと思っていました。

事業所も、首都圏では汐留、日本橋、羽田空港、成田空港と拠点があり、この間を社員が行き来しています。行った先や移動中でも仕事できるということであれば、効率化が進むと思うんですよね。

吉元:海外など時差のある国との仕事のある方も、フレックスタイムの制度を利用し、勤務時間を夜に設定して、ご自宅からネットを使ってミーティングに参加されたりしています。

荒牧:ANAグループにはあわせて3万3千人の社員がおりますが、業務プロセス改革室の立場で施策を進めています。社内ユーザーからもポジティブなフィードバックをもらっており、手応えを感じています。

安藤:ワークライフバランスも良くなりますよね。

荒牧:今回のインタビューは、イクボスというテーマでしたが、親御さんの介護のために仕事を休んだりとか、本人が体調不良などで通院したりする時など、育児に関わらないシーンでも効果がでると思っています。

安藤:そうですね。家族や自分のケアについて、企業の中で言い出せなかったという日本企業の体質みたいなのが今までありましたが、そういうのはどんどん少なくなって、時間制約も当たり前になって行かないとダイバーシティは難しいと思いますね。現在、グローバル企業は特に過渡期だと思います。

荒牧:ちょうど現在の職場でも、4月からシステム系の会社からインド人の社員に来てもらっています。上司の役員が、組織への刺激のために日本語が話せない人を入れようと。社員としての立場で働いてくれていますが、やはり職場の雰囲気は変わりますね。

【今後のビジョン】

安藤:今後のボスとしてのビジョンはいかがですか?

荒牧:産休、育休を経て復職する女性社員達が、気持ちよく働けて、より生産性を上げ、活躍出来るようにと願っています。本人達のやりがいにつなげるためには、まだまだ出来ることがあるんじゃないかと思っています。

今回このインタビューを受けるにあたり、今まで自分のもとで育休を取得した4人の部下にアンケートをとってみたのですが、みんないろんな意見を書いてくれました。それを読んで感じたのが、「イクボスセミナー」のようなものを社内でできればいいなということでした。復職する人に対してのセミナーはありますが、そういう社員を迎える上司のためのセミナーは、現在のところないんですよね。アンケートをやってみたことで、上司の理解の有無で働きやすさが大きく違ってくることに気付きました。

吉元:ちゃんとそういうことを考えて下さるのだということに信頼と安心感を感じています。

荒牧:年間、800から900人の社員が産休や育休を取得するので、その上司全員をカバーするのは大変だと思いますが、1回受講すればだいぶ違うわけですから、「はじめてのイクボス研修」なるものを制度化出来ればと思います。

安藤:男性の育休取得はいかがですか。

荒牧:これからはアリだと思いますね。昨日の電話会議のシチュエーションはまさにそうでした。奥様がどうしても仕事を休めなくて、2歳の子どもの急な発熱のケアで旦那の方が仕事を休んだ、ということでしたから。

安藤:イクボスが増えると会社の業績が上がると思いませんか?

荒牧:上がりますね、それは間違いないと思います。まさに、今回の部下のアンケートから出てきた回答のひとつに「自分は仕事で会社に貢献したい」という意見がありました。社員のモチベーションが上がると業績は上がりますから。

安藤:吉元さん、こういう上司に出会えて、どう感じていらっしゃいますか。

吉元:ステキですね〜(笑)。時には厳しく指導をして部下を育て、そして育児に対して理解もあり、真剣に一人一人の部下に接していただいています。私たち育児中の社員も甘えてはいけないと思うんです。そこで、お互いに理解しあいながら仕事していけたらいいなと思います。

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安藤:吉元さんも、そのうち「イクボス」になられるかもしれないですものね。

荒牧:そうです。実際に子どもを抱えながら仕事を続けてきた女性として、部下に対して私よりももっと幅広いサポートが出来るようになると思います。

私は週末には市民農園で野菜を作ったり、子どものサッカーチームのコーチをしたり、自宅に職場のメンバーを招いてバーベキューをしたりしています。サッカーコーチを始める前は、週末は疲れて寝ていたりしていましたが、最近ではサッカーチームのお子さん達のお父さん達と知り合い、地元に飲み仲間が出来たんですよね。生活がすごく変わりました。

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<イラスト/東京新聞>

安藤:「イクボス10か条」というものの中に、「まずボスがワークライフバランスを実践する」というのがあるんですが、まさにその通りですよね。ぼくから見ると、荒牧さんはイクボスの条件をすべて満たしています。やはりこういうボスが部下に言うことは全然違うんですよね。

荒牧:結婚して家庭を持った部下も家族で私の家に招いて、野菜を収穫したりしています。家庭を見てもらって、ひとつのモデルとして何か参考にしてもらえることもあるのではないかと思います。特に芋掘りと枝豆のシーズンがいいんですよね。6月のじゃがいも、10月のさつまいも、そして夏の枝豆と。

安藤:ビールが美味しそうですね、ぜひ今度呼んで下さい(笑)。ありがとうございました。

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インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:笹川直子)

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