2014年06月26日

第6回 佐竹 隆さん(株式会社メディ・ウェブ 代表取締役社長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第6回は、株式会社メディ・ウェブの佐竹 隆さんが登場。時代の先端を行くITベンチャーの社長は、ダイバーシティな人材をどう活かしているのか?新しい時代の、新しいボスの感性とビジョンについて、東京・虎の門にある本社でお話をうかがった。(FJイクボスプロジェクト

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<佐竹隆さんプロフィール>
富士総合研究所(現・みずほ情報総研)からソフトバンク、フリーランスを経て2007年に株式会社メディ・ウェブの設立に参画。病医院や医療関連企業向けの業務ウェブサービスを提供。患者と病医院、病医院内、病医院と企業の関係性に注力した、クラウド型診療支援サービス3Bees(スリービーズ)は、現在2000以上のクリニックで登録・利用されている。従業員数は開発担当を含めて15人。30歳で結婚、現在43歳。妻(39歳)、娘(中1)の3人家族。FJ会員。

【ボスは年下の外国人・MIT出身・・・ダイバーシティに目覚めた30歳の頃】

安藤:会社員(ソフトバンク)時代はどんな働き方だったんですか?

佐竹:朝7時すぎくらいに会社に来て、夜3時くらいに帰る、という感じでした。アメリカとも仕事をしていたので、現地の時間に合わせて電話会議をしたり、アメリカのニュース配信を翻訳して流すシステムの担当もしていたので、なにかトラブルがあったりすると自分に質問が来るので、とにかく忙しくて、歯医者に行くと寝てしまったり(笑)、そんな生活でした。

ソフトバンク時代に、ある医療系の大きな会社の立ち上げに携わって、ポータルサイトを作ったりしていたのですが、その会社が営業権譲渡で別の会社に事業の一部が譲渡されることになったんですね。その時の上司が、ソフトバンクグループに残るか、譲渡先の会社に移るか、自分で会社を立ち上げるか、その3つの中から選べば自分がサポートすると言って下さったんです。

安藤:それは、ある意味、「イクボス」ですね。

佐竹:そうなんです、とても素敵な方でした。結局、譲渡先の会社の方に移ったのですが、2年ほどそこからソフトバンクに出向するような形で、残った事業を担当していたんです。その時の上司が、自分より年下でした。その頃(2002年)ぼくは30歳で、上司は27歳で外国人、MIT(マサチューセッツ工科大学)出身。「世の中こういう時代なんだ、これからこうなって行くんだ」と強く感じました。

その頃から、ぼくは自分のまわりの方を全員「さん」付けするようにしました。自分より年下の人はたくさん今後出てくるだろうし、プロジェクトの中で社長とか部長とか役職名でよんでいたりすると、どうもやりづらかったりするんです。なので、どんな立場の方でも基本的に「さん」付けで呼ぶのが、とても理にかなっていると思いました。

安藤:それは、ダイバーシティに気付くきっかけでしたね。なかなか一般的な日本企業の中にいるとそういうことに気付けないから、ある意味ラッキーでしたね。

佐竹:まさにそうです。その頃から、週4日仕事をして、ほかの日は自分の仕事をするという形にして、ホームページを作ったりほかのサポートをしたりして、SO-HO向けの求人サイトを自分で運営し始めたのです。

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安藤:その頃、僕と出会ってますね。(注:偶然、佐竹氏と安藤氏は近所に住んでおり、子どもの年が1つ違いであることもあって、同じ保育園に子どもを預けていた時期が。)

佐竹:保育園に行くといるお父さんは、僕と安藤さんくらいだったんですよね。9時30分とか10時くらいに保育園に子どもを連れて行くと、安藤さんがいらして、「一体この人は何をしているんだろう?」と思っていました。あの頃、バギーや自転車でそんな時間に保育園に行くお父さん、いなかったんですよね。

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安藤:少し話が戻りますが、30歳で結婚というと、一番激しく仕事をしていた頃ですね。結婚生活としては働き方は大丈夫だったのですか?

佐竹:彼女も出版社で仕事していたので、土日もかまわず仕事していますし、今はうちの会社で広報として働いていますので、「やれるときにやらないとね」と理解してくれていました。

【自宅オフィスとリモートワークでワークライフバランス】

安藤:結婚してすぐ子どもが産まれ、ちょうど仕事が自宅に移る頃だったんですね。

佐竹:そうなんです、ちょうどそういう時期で。子どもが保育園にあがるころ、自分も自宅にオフィスを作って、会社に行って仕事は持ち帰ってするという形式に変えていたので、育児には良かったと思います。

丁度その頃、妻が仕事の都合で沖縄等に出張すると、自分の実家(山形県上山市)に連れて行くことも何度かありました。新幹線で、父親が一人で小さい子どもを連れているのは珍しかったのか、周りの人からとても助けてもらいました。あと、自宅オフィスだったので、スタッフにも育児を手伝ってもらったりして。ほんの1時間でも見ていてもらえると、本当に助かるんですよね。

安藤:ワークライフバランス的にはうまくまわせていた時代と言えますね。2007年に今の会社を立ち上げということで、その頃は忙しかったと思いますが?

佐竹:まだ事業開発をしているような段階で、ビジョンに対してどのように実現していけるかを会長(楊浩勇氏)と話をして、様々なクライアントに説明している間に仕事が頂けるような状態になり、ちゃんとこちらにコミットしてやらなければならないと。また、事業モデルとして、SO-HOで出来る内容と、チームでやらなければならない内容があるんですが、チーム化して取り組まないといけない感じになってきたんです。うちのCTOはフランス人(マルタン・イヴェリック氏)なのですが、その頃、彼も自宅で仕事をしていました。

安藤:イヴェリックさんは、お子さんは?

佐竹:2人います。とても親日家で、大学院の留学で日本に来て、そのまま日本の企業に就職したのですが、その頃から彼もぼくも自営を始めていたので、大きな案件が来ると、メッセンジャーでやりとりをして一緒に仕事をしたりしていました。2007年の前まではそんな感じで、いろいろな仕事の仕方をしながら、「自分は何をすると一番楽しいんだろう」と探っている感じでした。自分は、何も無いところから道を作るタイプではないのですが、流れの中で「自分はこちらの方が楽しい」と選んでいくように、今までの人生を歩んできた気がします。

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安藤:マネージメント、社員のワークライフバランスなどで、やったことはありますか?

佐竹:以前いた社員で、家族が病気がちな人がいました。彼はリモートワークで家族をケアしながら仕事したいということでしたので、「ぜひそうしたほうがいい」と。うちの会社のリモートワークでもいいし、自分で違うチャレンジがしたいのであればそれでもいいと話しました。それで、円満退社となり、今でもたまに会ったり、うちの会社のイベントの時など遊びに来てくれたりします。

また、CTOも2人目の子どもが産まれたとき、2週間育休のような形で、リモートで仕事をしながら、ずっと家にいるという働き方をしていました。うちの会社は医療に関わっていますので、社員のそういったことは、例えば病気をしたら患者さんやお医者さんはどのように感じるのかということを考えるきっかけになりますし、その人の仕事や人生がより豊かになる経験なんですよね。

また、安藤さんもよくおっしゃいますが、育児というのはある程度時間やタイミングが計算できますよね。あとはその人自身が、会社でどうやりくりするかだと思います。うちの会社は残業があまりありませんので、やりたい人は家に帰ってからでも仕事出来ますし。あと、社員に外国人が多いので(フランス、ポーランド、ウクライナ、アメリカ人が2人と、社員の3人に1人が外国人)、仕事の後に他社の人と会うということみんな積極的にやっていたり、当社でも主催できるように企画中です。決められた時間の中でどう工夫するかというところにクリエイティビティがあって、それを大事にしたいなと思っています。

安藤:それが成長ですものね。もっと効率がよくなって、生産性が上がるということで。

佐竹:社員のモチベーションが、「成長と貢献がどうあるか」ということだと思っています。当社が提供するサービスも最初からマルチリンガル対応になっています。これも、例えば今後、社員の国でも使えるようになればいいと思いますし、やりたいという人にはどんどんやってほしいと思います。

安藤:女性社員は何人いますか?

佐竹:妻を含めて3人です。

安藤:独身の女性が結婚して出産というケースは?

佐竹:それがまだないんです。フルに働かなくていいから、「これをやってみたい!」という行動力のある女性に来て頂きたいです。ぼくらからすると、子育て中の方とかはすごく良いんですよね。当社では、患者さんと、病院、企業という3つの関係性を良くするツールを作ろうとしていますので、自分が怪我したりして病院に行くのも「患者」としての視点になりますし、子育て中で「これがあるといい」という思いがある人が作ってくれると、サービスの細部に神が宿るんです。興味がある人でないと続かないんですよね。

なので、そのシチュエーションにある人、そういう経験がある人が、他人ごとではなく、自分のこととして考えられると思います。あとは、どういうアウトプットが出来るか、そしてどういう働き方が出来るか、ぼくらがどういう風にその方の働き方にアジャストできるか。現在のぼくらの能力でアジャストできない可能性もあるわけですよね。そこが、ぼくらの会社としても成長のポイントとなるんです。ぼくも、海外の社員を採用するにあたってビザの発給方法を学んだりしていますので、ひとつひとつの変化に適応しながらやっていきたいと思っています。

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<イラスト/東京新聞>

【イクボス10か条】

安藤:「イクボス10か条」というのを作っているんですが、どれくらい当てはまりますか?

佐竹:③に関しては、専門家の方に相談したり、他社の就労規則を参考にさせて頂いたりして学んでいます。④に関しては、ベンチャーですので、CTOの育休の様子などみんなが見ていますから、働き方に関してはよく共有できていると思います。⑥は会社立ち上げ当初からクラウドのグループウェアを導入していますし。みんな、自分のスケジュールに予定をどんどん入れていますし、ぼくや会長は家族の予定も書いたりしています。書きたくないことは、「重要」とか書けば良いし、予定が入れられたくないところはブロックしてしまえば
良いですからね。

安藤:だいたい全部、出来ていますね。さすがです。これ、ボスなら当たり前なんだけど出来てない人は巷に多いんだよね。

【不満はチャンス】

安藤:最後に、これから入ってくるだろう若い人たちに、イクボスとしてアドバイスやメッセージがあればお聞かせください。

佐竹:いろいろ試してみた方がいいんじゃないかと思うんですよね。不満はチャンスだと思うんです。どういう風にしたら変えられるのかという視点になりますし。また、ポートフォリオをいくつか持った方がいいと思うんです。大学では建築科に通っていましたが、建築家になるのが一番時間がかかるような気がしていたんです。一人前になるには10年以上はかかるだろうと。でも、結局自分が一人前になるのに、10年以上かかっているんですよね。浅はかだったと思います(笑)。

振返って見ると、30歳目前の頃は、30をいかにノリノリで「これから仕事できるぞ!」とセットアップするかということに目的意識を持っていました。自分はどう楽しく、より豊かに生活出来るか、生きていけるのかと考えていました。そして30過ぎくらいから、あまりにも忙しくなって思いが無くなり、35くらいでふと忙殺されている自分に気がついたんです。

そこで、「自分は何をやると楽しくてより豊かになれるかな」と考えた時に、①ずっと医療に関わってきたので、医療に携わる仕事(メディカル)、②実家が山形なので、地域ビジネスや、ハイパーローカルなアクションをとりたい(地域)(読み聞かせ/※佐竹氏と安藤氏は共に子どもが通った小学校で絵本の読み聞かせボランティアをやっている)、③自分がどういう風に生きていくか、という「生き方」(ライフデザイン)の3つ、すべてやりたいと思いました。

そして、今メインでお金を頂くところと、ボランティアするところ、そして学ぶという3本柱が、うまく入れ替えたりローテーション出来たりすると、より自分の人生が豊かになると思ったんです。以前誰かに言われたのですが、目の前にある選択肢が1つの時は「洗脳」、2つの時は「脅迫」、3つめからようやく「機能的に人が選べる」いっぱいあると迷うのですが、選択肢を持たせる時には3つ以上だと良いそうです。

自分の中では今、この3つのテーマを持ってやっています。年を取ってから突然そういうことをやるには、リスクが高すぎると思いますので、若いうちからやってみるといいと思います。

あと、若い人たちと一緒に仕事やプロジェクトをしたいですね。当然、年上の方々とは今も、色々教えて頂いたりしながら仕事していますが、「これを、こう考えるか!」とか、「この発想、すごいな!」というのがすごく楽しいんです。自分のまわりに、「この人、これ優秀だな!」とか、「この視点があるのがすごいな!」という、新しい視点があるのが楽しいんです。

安藤:若い人と競ってしまう上司もいるからね。

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佐竹:そうならないためにも、自分が組織を作って、そこに関わろうとずっと思っています。お祭りも、神輿を見ているより担いだ方がずっと楽しいですから。若い人のことも、ステレオタイプで見るのではなく、「あなたは何がしたいのか」と質問する力で、その人のクリエイティビティというか、その人の輪郭がみえてくると思うんですよね。質問する力は、ぼくの課題でもあります。

安藤:そういう質問が出来る管理職が増えるといいと思いますね。全部自分でかかえて誰にも相談出来ないという人をたくさん知っていますので、もうちょっと部下を信用していろいろ聞いてみればいいと思う。

佐竹:そういう上司のパターンは、ゴールをはき違えていますよね。自分を守ることがゴールになっている。
「このチームの中でどこの高みを目指すか」とか、「ぼくらどうやってグルーブしてここでいい感じで仕事するか」とかがゴールになっていない。優秀な部下がいた方が楽で良いじゃないですか(笑)。「こいつの手柄なんですよ!」と言い続けて、どんどんチームが成長していけばいいんです。イクボスに限らずどこでもあることかもしれませんが、そういうところで働けない優秀な人が出てくるというのはもったいないと思います。

安藤:そういうところに余裕を持ってマネジメントできるような、意識のチェンジや環境があるといいなと思いますね。みんな余裕が無くなって、家庭のことや地域活動をする時間が無くなって、狭いところをぐるぐる回っているような状況が長年続いたので、佐竹さんのような新しい感性でインパクトのある仕事をしているボスを見ると、元気が出ます。小学校で絵本とか読んでるからね(笑)。そういうシーンの「佐竹パパ」と、会社にいる時の「佐竹ボス」が、僕から見るととても自然に見える。

佐竹:子どもも会社に遊びにくるんですよ、僕だけじゃなくて社員の子どもも。あとその子どもの友達も来たり。会長の飼い犬もたまに来たりするので、夏休みなどはその犬と散歩しに来たりとか。ぼくは、地域活動で知り合った方の息子さんと仲良くなって、その子が友達つれて会社に遊びに来てくれたりもします。

その中学3年生の子とFacebookで友達になったりして、「映画が作りたいんだけど」なんていう相談に「クラウドファンディングっていうやり方があるよ」とアドバイスしたりして。自分の子じゃない子と話していることで、「こういうことを考えるんだ」と参考になったりすることが、よくあります。

安藤:それも地域活動の成果ですね。職場と家を往復しているだけのお父さんは、なかなかそうはなれないよね。

佐竹:そうですね。「何を考えているのか、何を見ているのか」ということを知りたいんです。それが自分たちの会社を良くしていくことにも繋がると思うし、ぼくらの強みを教えてくれることにもなりますから。

「なんで来やすいと思ったのか」とか聞いてみて、その理由を教えてもらえたら、「こうやって人に伝えるとより来てくれるんだ」ということが分かったりしますから。テストマーケティングなんです(笑)。

安藤:今日はありがとうございました。
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インタビューの後、毎週水曜日の社員交流ランチに参加させていただきました。隔週で言語が「日本語」「英語」となっていますが、それぞれの言葉が苦手な社員には、ほかの社員がフォローします。毎回、フリートークのリーダーが決められていて、この日の話題は「映画」。自分の好きな映画について各自が話し、とても和気藹々と盛り上がりました。日頃からの社内のコミュニケーションがうまくいっている様子が、とてもよく分かりました。メディ・ウェブの皆さま、本当にありがとうございました。

インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:笹川直子)
タグ:イクボス
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2014年06月17日

第5回 金柿秀幸さん(絵本ナビ 代表取締役社長)

イクボス・ロールモデルインタビュー第5回は株式会社絵本ナビの金柿秀幸さんが登場。
「子どもに絵本を選ぶための情報を集めた参加型絵本紹介サイト」というコンセプトで、2002年4月にオープンしたインターネットの絵本情報・通販サイト絵本ナビを運営する。スタッフ32名中、女性が約7割。男性も3名が育休を取得。会社を立ち上げた経緯や、メンバーへの想いなど、東京にある本社でお話をうかがった。(FJイクボスプロジェクト
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<金柿秀幸さんプロフィール>
45歳。大手シンクタンクにて、システムエンジニアとして民間企業の業務改革と情報システム構築を推進。その後、総合企画部調査役として経営企画に従事。2001年、愛娘の誕生にあわせて退職。約半年間、子育てに専念した後、株式会社絵本ナビを設立し、代表取締役社長に就任。2002年、絵本選びが100倍楽しくなるサイト『絵本ナビ』をオープン。2003年、「パパ's絵本プロジェクト」を結成。 雑誌など各メディアにて絵本紹介、講演など多数。NPO法人ファザーリング・ジャパン初代理事。編書に『幸せの絵本』シリーズ、『大人のための絵本ガイド』(以上、SBクリエイティブ)、共著に『絵本であそぼ!』(小学館)がある。


【きっかけは社長自身の考え方の変革】
安藤:もともとはどんな働き方だったんですか?

金柿:独立する前は銀行系のシンクタンクでSEとして働いていたんです。仕事は山ほどあるから、毎晩夜中まで働くという職場でした。20代の頃は本当に限界に挑戦している働き方でしたね。夜中の2時頃まで働くことも普通でした。

結婚してからも働き方は変わらず、逆に以前よりも仕事に打ち込むようになりました。結婚して妻がいるから、余計にオトコとして外で仕事をがんばれるという考え方からです。父親が企業戦士でしたから、そのイメージも刷り込まれていたのだと思います。

安藤:それが変わったのはいつからですか?

金柿:父が脳梗塞で倒れたときです。でも最初は、「なぜ、こんなに忙しい時期に倒れるんだ」と腹が立ったというのが本音でしたね。で、4日後になってやっと会いに行き、一時的に半身麻痺になっていた父を見て、「自分はなんて恥ずべき行動を取っていたのだろう」と思いました。人として最低だなと。そこから考え方が変わりました。

その後、妻が妊娠した知らせを聞いて、そのときに、将来のわが家の姿が頭に浮かんだんですよ。「ただいまー」って帰っても、暗い家の中。家族にイライラして、「誰のおかげで飯を食えてるんだ!」なんていう家庭のイメージ。同じ職場の先輩は、子どもに「今度いつ来るの?」って言われたよなんて、誇らしげに語っていて、このままだと自分もそうなってしまうと思いました。ちょうど30代に入ってこれからどう生きていこうかと考え始めた時期。仕事だけして会社で偉くなっても、それでは自分も家族も幸せではない、と気付いたんです。

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安藤:それで会社を辞めて、絵本ナビを立ち上げたんですか?

金柿:会社を辞めて、子育てしながら、子どもとのコミュニケーションツールだった絵本に市場があるのではないかと、絵本ナビを立ち上げました。でも事業が軌道に乗るまではやっぱり仕事中心になってしまって、オフィスに泊まり込みする日もある毎日……。

娘が小学生になる頃、ワークライフバランスの講座に出る機会があり、「日本の労働生産性は先進国中最下位」というデータを見て愕然としたんです。仕事で家庭を犠牲にしなくてはならないのは、俺達の仕事のやり方が下手だからなんだと気付いて、悔しくて悔しくて……。

【ハードワークだけど、子どものために休める会社】

安藤:それで今の会社のビジョンができたんですね。

金柿:「ハードワーク。でも、子どものためならいつでも休める会社」というビジョンを立て、社長である自ら実践することにしました。

社内インフラを整備して、社内SNSとグループウェアで情報を共有しています。北海道にも従業員がいますが会議はオンライン会議ツールで行います。会社にいないと話が進まないということにならないように、会議も極力減らしています。

議論も社内SNSで交換するため、会議の時間を設定することも少なくなり、会議をする場合でも15分から30分程度にとどめています。情報共有を進めているから、子どもの行事はもちろん、急な病気でも気兼ねなく休める。ただし、仕事に向かうときは、最大限のパフォーマンスを発揮できるよう、仕事の権限や責任も与えています。

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安藤:家族と夕食を一緒にできてますか?

金柿:娘が小学生の間は、週5日は家で食事すると決めて実践していました。今は中学生になったのでまた仕事の比率を上げています。娘に「パパがいなくて寂しい」と言われるのも期間限定ですから。率先して帰るようにしています。

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安藤:メディア編集部の竹原さんは、働いていてどうですか?

竹原:前の会社では、会社に来ないと仕事が始まらなかったから、子どもが病気だと両親に休んでもらったり、自分は仕事に出ていても「大丈夫かな」って気になりながら仕事をしていました。

こちらに入社したのは3人目の末っ子が4カ月の時。まだ保育園も決まっていなかったんです。上の子が熱を出したときも、イヤな顔をされず、在宅でも働ける環境を整えてもらってすごく助かりました。「お子さんの熱が下がるまでは、仕事しなくて良いです」なんて言ってくれる会社にびっくりです。でもだからこそ、子どもが治ったらまた精一杯働こうというスイッチが入ります。

安藤:法人営業部の田中さんはどうですか?

田中:前の会社は育休などの制度は使いやすかったんですが、ママキャラになってしまうんですよ。いわゆるマミートラックですね。プロジェクトなどに参加したくても、バリバリ仕事することを期待されているわけではないので、気が引けてしまう。その結果、徐々にやる気も下がっていってしまう、という感じでした。

今までは、子育てしながらなので、仕事の仕方を自分も周りも制限してきたように思うし、自分自身期待されないのは当たり前と思っていました。でもこの会社は、社員として1人前に見てくれるのがうれしいです。

金柿:我が社の場合は、みんなにバリバリ仕事することを期待していますからね(笑)。
一般的な職場では、毎晩深夜まで働く企業戦士になるか、時短で働くアシスタントかの2コースしかないのですが、「決まった時間内で徹底的に仕事する」という活躍の場があることで、優秀な女性もどんどん入社してきてくれています。

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【専門性はありながら、チームでカバーできる】

金柿:子どもがいるいないに関わらず、担当者が急に休まざるを得ない状況はありますよね。それが起きることを前提に、情報共有、仕事の標準化、前倒しの進行などを意識的に進めています。各スタッフは専門性の高い仕事をしているのですが、その人がいないとダメという状況をできるだけ作らないようにしています。

竹原:私の所属するメディア編集部では、仕事の状況だけでなく、子どもの体調など家庭の状況も常に共有できていて、何かあればすぐにサポートしあえる関係作りができています。
夫とも仕事の話が対等にできるようになってうれしいです。「私が今このプロジェクトを担当しているから、この週は子どもが具合悪くなったらパパが休んでね」とか。家族としても、両立の意識が持てるようになりました。
子どもと絵本を読む時間も増えて、そこでひらめいたことが仕事につながることもあります。

田中:週末に子どもと出かけることを隠さずにいられることが嬉しいです。子育てに理解がない会社だと、週末に出かけるから子どもが体調崩すのではと思われる方もいらっしゃるので……。

竹原:平日の保護者会とかも、会社のスケジュールに記入できますからね。子どもの体調が悪くて休むことはできても、保護者会や学校行事で休むのは普通なら気が引けるものですが、絵本ナビではそれが当たり前になっているんです。理解と信頼関係しっかりできていると感じます。

金柿:こういったやり方は、「強い組織を作って高い成果を出し続ける」ための戦略なんです。「会社への忠誠を誓う男性中心の組織で長時間労働を前提に事業を行う」というのもひとつのやり方ですが、我が社は違うやり方で強い組織を作る覚悟をしています。仕事だから、納期やサービスの質を追求するのは当たり前のことですが、やり方はひとつじゃないと思います。子育てを通じた活き活きとした体験や視点をもとに、新しい発想やイノベーションが生まれていて、それが強みになっています。

安藤:バランスの取れた組織が必要だよね。それぞれが自主的に動けて、みんなが生きる組織。それが戦略的にも強い組織になるんじゃないのかな。

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<イラスト/東京新聞>

安藤:「イクボス10か条」にあてはめてみると、自分はどうだと思いますか?

金柿:ほとんどできていると思います。

安藤:すばらしい。夫婦でもパートナーシップが大切だけど、ボスと従業員も信頼関係が大事だよね。今日はありがとうございました!

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インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:高祖常子)
タグ:イクボス
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2014年06月10日

第4回 大堀正幸さん(株式会社大堀商会 代表取締役)

イクボス・ロールモデルインタビュー第5回は株式会社大堀商会の大堀正幸さんが登場。住宅リフォーム(外装・内装・外構工事)などを行っている企業です。毎年開催のTOTO販売コンテストでは、新潟県下越地区トイレ販売で2年連続トップの成績。従業員数26名、平均年齢37~8歳の会社です。「ハッピー・パートナー企業(新潟県男女共同参画推進企業)※」としても登録されています。(FJイクボスプロジェクト

※新潟県では男女が共に働きやすく、仕事と家庭生活などが両立できるように職場環境を整えたり、女性労働者の育成・登用などに積極的に取り組む企業を登録。

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<大堀正幸さんプロフィール>
40歳。大堀商会は2013年度に35周年を迎えた。入社5年目、28歳にして社長となり、よりお客様の住まいを安心かつ快適にするには企業として水道業だけでは対応が難しいと感じ、住宅リフォームをスタート。現在は、新発田市のリフォーム店のトップ企業としての立場を確立。1歳&3歳の子のパパ。

【父から受け継いだ会社。父は反面教師だった】

安藤:大堀商会は、どんなことをしている会社ですか?

大堀:リフォームの会社です。大学卒業後、父の会社に入社して働いていましたが、28歳で父から受け継ぎ社長になりました。現場管理は古参の部長達が行っていて、当初はダメダメな2代目ボンボン社長でしたね。仕事の仕方自体、とても生産性が悪かった。
そうこうしているうちに、会社がつぶれそうになったんですよ。従業員は離脱していくし、残る人は給料が高い激ボスばかり。生産性もどんどん落ちていったし、メンバーも仕事をやりにくくなったので、激ボスには辞めていただきました。そんな感じでしたから、引き継ぎも大変でしたね。経営、営業、現場管理を一通りやらなくてはならなくなって。資料を引っ張り出して、朝5時から働き、半年間1日も休まない日が続きました。

安藤:ご結婚は?

大堀:30歳で一度結婚し、子どもも2人いましたが4年で離婚しました。仕事が忙しく、帰れない日々が続きました。妻が子育てで息詰まっていることにも全く気づけなかった。そもそも家にいなかったんですから。
今は再婚し、1歳と3歳の子どもがいます。おなかの中で赤ちゃんが育たない胎児発育不全があり、待望の出産でした。それまでは、男は赤ちゃんをお風呂に入れるくらいで良いと思っていたんですけどね。家族に対する思いは、妻に学びました。妻は家族をとても大切にする人で、妻の親と一緒にいる時間も心地いいんですよ。

安藤:お父さんに対する思いは?

大堀:父が創業した会社を20代後半でいきなり引き継ぐことになり、引き継いだ直後はかなり恨んでいましたね(笑)。でも今は自分も経営者になり、尊敬に変わりました。小さい頃の父との思い出は、仕事に一緒に連れて行かれて、車の中で待っていた記憶くらいです。バブル期は毎日飲み歩いて、家に帰って来なかったですし。

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【子育ての制度よりも風土。率先して見せることが大事】

安藤:会社の子育ての制度などはいかがですか?

大堀:基本的に制度はいじっていないんですよ。育休もあるけど、従業員は取らないし取れなかった。そこを、育休はもちろん、家族の行事なども優先しようと従業員に伝え続けました。子どもを病院に連れて行くとか、授業参観とか、三者面談とか、子育てしていると用事や行事も多いですからね。
業務部に女性が4人いますが、家族のイベントにどれだけ参加できたか、スケジュールで見えるようにしています。もちろん、人によってはあまり公表したくない人もいますから、そこは尊重していますけれど。

安藤:その辺の対応は、お父さんへの想いもあるんでしょうか。

大堀:反面教師のところはありますね。3~4歳くらいまでは、ばあちゃんに育てられてましたし、父親に学校行事に来てもらった思い出もありません。従業員の子どもたちには、行事に「親が来てくれた」と言う記憶が残るといいなと思っています。
私も先日、子どもの保育参観があり、夫婦で参加しました。子どもを園に送るために出社時間を遅らせることもありますし、夕方4時のお迎えを担当することもあります。

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安藤:時間のやりくりはどうしていますか?

大堀:出社は5時から6時くらい。出張や会合も月半分くらいありますから、子どもを迎えに行かれる時には行くようにしています。家族の時間も大切にしながら、仕事もちゃんとする。両方どうやったらできるか、常に考えていますね。ITがあればどこにいても仕事ができますし。社長は遅く出社する重役出勤というイメージがありましたが、会社に一番に出ていっています。庭や駐車場の掃除もしますよ。

安藤:社長が早く出社していると、従業員が逆にプレッシャーを感じたりしませんか?

大堀:朝型に社風を変えたいという意識はありましたね。午後は生産性が上がらないし、15時以降は仕事したくなくなりますから(笑)。17-18時には必ず帰るようにしています。そうすると、子どもとの時間も取れますから。今の生活サイクルは、本当にいいペースだと思っています。

安藤:今後のビジョンを聞かせてください。

大堀:移動時間や業務そのものの時間を減らせるようにしたいと思っています。ITツールを利用して、全社員にスマートフォンを持たせています。先日サーバーも入れ替えて、スケジュール共有もしやすくしました。
全体で15%労働時間が減ったんですが、売り上げは落ちなかった。つまり生産性が上がったということです。でも、20分早く帰れるくらいでは、従業員も変わったという実感が湧きませんから、もっと「見える化」したいと思っています。
社内でワークライフバランスを実現するための「スマイルプロジェクト」を立ち上げました。「社員がやりがいを持って働き、家庭や地域社会でも多様な生き方を選択・実現できる会社を目指すこと」を目標に掲げています。

安藤:具体的にはどのようなことをしているのですか?

大堀:先日、研修で「自分のワークライフバランスはどのくらい? 5年後はどうしていたい?」と現状の分析と、理想を実現するための課題整理を行いました。具体的に自分の生活をイメージすることが大切だと思います。たとえば毎日30分の時間を勉強に当てたりすれば、1年間では相当な時間数になりますから。生み出した時間を、子育て中でも独身の従業員でも有効に活用して欲しいと思っています。

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安藤:見えるようになることは大切ですね。

大堀:3歳以下のお子さんがいる場合は、年間10日間は育休か有給を取ることを推奨しています。その場合は、育児家事レポートを提出してもらっています。レポートを共有することで、大変さや時間の使い方もわかりますから。育児家事で学ぶことは管理者研修を受けさせるよりよっぽどマネジメント能力の学びは大きいと思いますので、費用対効果で考えると、よっぽど安いと思います。

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安藤:「イクボス10か条」にあてはめてみると、自分はどうだと思いますか?

大堀:ほとんどできていますかね。

安藤:最後に社員へのメッセージをお願いします。

大堀:子どもはいずれパパやママになるのですから、親からの幸せ感をちゃんと受け取れるといいですね。そのためにも、今育てているパパママ自身が、仕事の中で優秀な人材として育っていきながら、家族の時間も大切にできる生き方をしていって欲しいと思います。

安藤:ありがとうございました!

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インタビュー:安藤哲也(ファザーリング・ジャパン ファウンダー)
(筆:高祖常子)
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